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わにとめんどり

たまには子どもと添い寝をしながら、こんなお話を聞かせてあげましょう。 [おもしろ民話集 70]

むかし、ある川の近くに1羽のめんどりがすんでいました。めんどりは、毎朝のように、えさをひろいに川に下りていきます。この川には、大きなわにが住んでいて、「なかなかうまそうな、めんどりだ。そのうち、あいつを食べてやろう」と思っていました。

ある朝、わには、河原のしげみに隠れて、めんどりがやってくるのを待っていると、そんなこととは知らないめんどりがやってきて、さっそくえさをさがしはじめました。

わには、いきなりしげみから飛び出すと、「おとなしく、おれに食われるんだ」といいました。驚いためんどりは、「どうかわたしを食べないで、お兄さん」とさけびました。わには、お兄さんといわれたので、面くらって、食べるのを忘れているうちに、めんどりは逃げてしまいました。わには、一日中考えました。(お兄さんということは、このおれが兄で、あいつが妹だということだな。いや、聞き違いだろう) と思いましたが、気になってしかたがありません。それで、翌朝、たしかめることにしました。

わには、めんどりのくるのを待ちました。すると、めんどりがやってきたので、わには飛び出しました。「きのうはうまく、おれから逃げたな。きょうこそは、おまえを食ってやる」「どうかわたしを食べないで、お兄さん」と、また、めんどりがいいました。聞き違いではないことがわかったわには、わけがわからず、まごまごしているうち、まためんどりは逃げていってしまいました。

それからのわには、朝から晩まで、そればかり考えていましたが、答えが見つかりません。友だちの大とかげにあったので、聞いてみることにしました。「いいところであったな。ちょっとおまえに聞いてほしいことがあるんだ」「あらたまって、何だい?」「じつは、川で、うまそうなめんどりにあったのだが、食ってやろうとすると『食べないで、お兄さん』っていうんだ。それで、おれは食うのをやめたんだが、どうしておれは、あいつのお兄さんなんだろう」

「それで考えこんでたってわけか」と、大とかげは、笑いながらいいました。「いいか、かもは、何から生れるか知ってるか?」「たまごだろ」「それじゃ、かめは?」「かめも、たまごだ」「おれや、おまえは」「きまってらぁ、たまごだ」「それじゃ、めんどりは?」「やっぱり、たまごだ」「それでわかったろ。おれたちゃ、みんなたまごから生れてるんだ。だから兄弟みたいなもんだ」「なーるほど」わには、ようやく納得がいきました。

わにが、めんどりを食べないのは、そんなわけからなんだって。


「1月24日にあった主なできごと」

1848年 ゴールドラッシュ…アメリカのカリフォルニア州の大工が偶然に金を発見、歴史に残るゴールドラッシュのきっかけになりました。1849年には一獲千金をねらう8万人もの人々が、西部カリフォルニアをめざしたといわれています。

1911年 幸徳秋水死去…明治時代の社会主義者で、「大逆事件」という天皇の暗殺を企てたという疑いにかけられた幸徳秋水が処刑されました。

1965年 チャーチル死去…第2次世界大戦の際、イギリス首相として連合国を勝利に導くのに大きな力を発揮し、『大戦回顧録』の著書によってノーベル文学賞を受賞したチャーチルが亡くなりました。

1972年 横井庄一発見…太平洋戦争の時の日本兵・横井庄一が、グアム島で発見されました。1944年に上陸してきたアメリカ軍に追われ、島の奥地のジャングルに隠れ、自給自足のくらしを28年も送っていたのです。降伏を恥とする旧日本軍の教えを忠実に守って帰国した横井の第一声は「恥ずかしながら生きながらえて帰ってきました」でした。

投稿日:2013年01月24日(木) 05:11

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)