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『フランス革命史』 のミシュレ

今日8月21日は、『フランス史』『フランス革命史』などを著し、歴史における民衆の役割を高く評価したフランスの歴史家ミシュレが、1798年に生まれた日です。

パリの零細な印刷業者の子に生まれたジュール・ミシュレは、幼少年期を、父の仕事を手伝いながらうす暗い地下室で勉強に励みました。1810年にはナポレオンが印刷統制制度を発表したため、父が廃業を決意したことで極貧生活を強いられるものの懸命に学び、21歳で新設したばかりの教授資格試験に合格しました。

1827年、エコール・ノルマル(高等師範学校)の歴史と哲学の教授につくと、近代歴史哲学の先駆といわれるイタリア人ヴィーコのフランス語訳をするうちにその歴史論・哲学の影響を強く受けます。1830年の七月革命を境として自由主義に転じると、1831年に国立古文書館の歴史部長、1834年には『ヨーロッパ文明史』で名高いギゾーの後任としてソルボンヌ大学の教授となると、以後24年をかけて完成する『フランス史』(全17巻)の執筆を開始しました。

1838年から、コレージュ・ド・フランスで教鞭をとるうちに、民主主義的になり、保守化した当時の支配者ルイ・フィリップや、体制側のギゾー批判を行うようになります。そして1847年から執筆しはじめた『フランス革命史』(全7巻)では、イエズス会の教育方針を批判し、常に国民の側に立って、これまで注目されなかった民衆の役割を重要視したことで、「二月革命」が1848年に起きると、これを熱狂的に支持しました。

ところが革命は挫折し、1851年のクーデターによって権力を握ったルイ・ナポレオンが、ナポレオン3世として即位すると、その宣誓を拒否したことで弾圧を受け、コレージュ・ド・フランスの教授の地位を追放されてしまいました。しかし、民衆の役割を中心としたミシュレの歴史感は、以後の歴史科学のもっとも重要な視点とされ、ヨーロッパじゅうの共和派の青年層に大きな影響を与えました。

晩年の散文詩的4点シリーズ『鳥』『昆虫』『海』『山』、心のシリーズ『愛』『女』や中世の魔女を評価した『魔女』なども高く評価され、今も読みつがれています。また、『フランス史』第7巻の中で、フランスのルネサンス(フランソワ1世以降)について記述し、これは「ルネサンス」という用語を学問的に使用した最初の例とされています。


「8月21日にあった主なできごと」

1862年 生麦事件…今の横浜市鶴見区生麦で、薩摩藩の島津久光一行の前を4人のイギリス人が乗馬のまま横切ったことで、一部の藩士が4人を殺傷、これが原因で、翌年8月に薩英戦争がおこりました。

1911年 「モナリザ」盗難…パリのルーブル美術館から、レオナルド・ダ・ビンチの代表作「モナリザ」が盗まれました。2年後、フィレンツェのホテルで無事発見されましたが、盗みだしたイタリア人のペンキ職人は「レオナルドの故国イタリアへ絵を返してもらっただけだ」と豪語したと伝えられています。
投稿日:2014年08月21日(木) 05:17

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)