たまには子どもと添い寝をしながら、こんなお話を聞かせてあげましょう。 [おもしろ民話集 54]
むかし、悪がしこい手品師がいました。ある日、オウムを使った手品を思いつきました。オウムに人が話しかけると、「たしかにそう」と返事をするように教えこんで、町の人をだまそうと考えたのです。
オウムに「たしかにそう」と覚えこませると、さっそく手品師は町へでかけていき、見物人が集まるのを待って、オウムに尋ねました。「このへんに、お金か宝物がありそうだが、どうかな?」
するとオウムは、「たしかにそう」と答えます。そこで、見物人たちの足もとを掘ると、ほんとうにお金が出てきました。先にこっそり、お金をうめておいたのですから、あたり前です。
やがて、手品師が帰ろうとすると、一人の男が追いかけてきました。オウムを10万円でゆずってくれというのです。手品師は、もったいぶって、「これは、特別な能力を持ったオウムなので、とても10万円というわけにはいきません」「それじゃ、20万円。いや、30万円で売ってくれ」。手品師は、内心はうれしくてしかたがないのに、お金と引き換えに、しぶしぶ男にオウムを渡しました。
喜んだ男はさっそく家に帰ると、手品師がやった通りに、オウムへ話しかけました。するとオウムは、「たしかにそう」と答えます。そこで男は、胸を躍らせて地面を掘りました。ところが、何にも出てきません。なんど「たしかにそう」といわせても、同じです。
男は手品師にだまされたことに気がつきました。そして、大きな声で「おれは、何てバカなんだ」といいました。すると、オウムはいいました。
「たしかにそう」