たまには子どもと添い寝をしながら、こんなお話を聞かせてあげましょう。 [おもしろ民話集 53]
おろか村という小さな村の、おろか話です。
あるとき、お寺の和尚さんが、村じゅうの者に、ごちそうをするから、みんなで食べにくるようにいいました。ところが、みんなは、ごちそうは食べたいけれど、困ったことがありました。行儀のよい食べかたを、誰も知らなかったのです。そこでみんなは、庄屋さんのところへ、相談にいきました。すると庄屋さんは「なーに、わしのする通りにまねをすればよいのじゃ」と、いってくれました。
こうして、招かれた日のこと。庄屋さんを先頭に、みんなはぞろぞろついていきます。ごちそうが、みんなの前に出されました。「それではいただきます」と庄屋さんがいって箸をとると、みんなも「いただきます」と、声をそろえて箸をとりました。庄屋さんがおわんのふたをとると、みんなもふたをとります。
ところが、箸でつまんだ庄屋さんの芋が、つるりと落ちて、ころがってしまったから大変。「なーんだ、芋はころがして食べるのか」と思ったみんなは、いっせいに芋を畳にころがしたのです。そして、あわてた庄屋さんが、また、箸でつまもうとすると、またつるり。みんなもまねして、つるり、つるり。あっちでもころころ、こっちでもころころ、ころころ、ころころ……まるで芋と遊んでいるみたいです。
さあ、これを見た庄屋さんは、もうおかしくて、おかしくて、たまりません。庭に飛び出すと、腹をかかえて大笑い。みんなも、いっせいに庭へ飛び出して、ワハハハ、ワハハハ、ワハハハ……笑いがとまりませんでした、とさ。