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タヌキとキツネの化けくらべ

たまには子どもと添い寝をしながら、こんなお話を聞かせてあげましょう。 [おもしろ民話集 44]

むかし、化けるのがじょうずなタヌキとキツネがいました。二人はいつも 「日本一の化け上手は、ほくだ」 といばっていました。そこである日、キツネはタヌキにいいました。「今日こそ、どちらが日本一か決めようじゃないか」 というと、どんどん走っていって、道ばたのお地蔵様に化けて、タヌキを待ちました。

まもなくタヌキがやってきて、お地蔵様の前でお弁当を広げ、おいしそうにおにぎりを食べはじめました。お地蔵様に気づいたタヌキは、お供えにおにぎりを置いておじぎをしたところ、おにぎりが消えています。ふしぎに思ったタヌキは、もうひとつあげておじぎをしたところ、お地蔵様の手におにぎりが半分乗っかっています。(さては、キツネだな) と、お地蔵様の手をたたいたところ、キツネは笑いながら、「ごちそうさま、ぼくの勝ちだな」 といいました。

さて、こんどはタヌキの化ける番です。「ぼくは、殿様に化けるよ。あしたのお昼ごろ、りっぱな殿様になって、お供をたくさん連れてここを通るから、よーく見ておいてね」 と、タヌキはキツネにいって別れました。

よく朝のこと、キツネは道ばたのかげから、タヌキの殿様の行列がくるのを待ちました。でも、なかなか来ないので、ウトウト眠ってしまいました。やがて 「お殿様のお通り」 という声に目をさましたキツネは、びっくりしました。りっぱな殿様の行列が、ゆっくりゆっくりやってくるではありませんか。

「やぁ、タヌキくん、うまく化けたな。負けた、負けたよ」 と、キツネはお殿様の前へ出て行くと、大声で叫びながら手をたたきました。ところが、それは本物のお殿様の行列だったのです。「無礼者、何とふらちなキツネか」 お殿様の家来たちが飛び出して、キツネを何度もたたきました。「ヒャー! 」 キツネは、悲鳴をあげながら逃げていきました。

タヌキは、殿様の行列が来るのを知っていたのにちがいありません。さあ、どちらが化け上手だったかな?

投稿日:2008年06月03日(火) 09:24

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)