たまには子どもと添い寝をしながら、こんなお話を聞かせてあげましょう。 [おもしろ民話集 44]
むかし、化けるのがじょうずなタヌキとキツネがいました。二人はいつも 「日本一の化け上手は、ほくだ」 といばっていました。そこである日、キツネはタヌキにいいました。「今日こそ、どちらが日本一か決めようじゃないか」 というと、どんどん走っていって、道ばたのお地蔵様に化けて、タヌキを待ちました。
まもなくタヌキがやってきて、お地蔵様の前でお弁当を広げ、おいしそうにおにぎりを食べはじめました。お地蔵様に気づいたタヌキは、お供えにおにぎりを置いておじぎをしたところ、おにぎりが消えています。ふしぎに思ったタヌキは、もうひとつあげておじぎをしたところ、お地蔵様の手におにぎりが半分乗っかっています。(さては、キツネだな) と、お地蔵様の手をたたいたところ、キツネは笑いながら、「ごちそうさま、ぼくの勝ちだな」 といいました。
さて、こんどはタヌキの化ける番です。「ぼくは、殿様に化けるよ。あしたのお昼ごろ、りっぱな殿様になって、お供をたくさん連れてここを通るから、よーく見ておいてね」 と、タヌキはキツネにいって別れました。
よく朝のこと、キツネは道ばたのかげから、タヌキの殿様の行列がくるのを待ちました。でも、なかなか来ないので、ウトウト眠ってしまいました。やがて 「お殿様のお通り」 という声に目をさましたキツネは、びっくりしました。りっぱな殿様の行列が、ゆっくりゆっくりやってくるではありませんか。
「やぁ、タヌキくん、うまく化けたな。負けた、負けたよ」 と、キツネはお殿様の前へ出て行くと、大声で叫びながら手をたたきました。ところが、それは本物のお殿様の行列だったのです。「無礼者、何とふらちなキツネか」 お殿様の家来たちが飛び出して、キツネを何度もたたきました。「ヒャー! 」 キツネは、悲鳴をあげながら逃げていきました。
タヌキは、殿様の行列が来るのを知っていたのにちがいありません。さあ、どちらが化け上手だったかな?