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パタパタとプウプウ

たまには子どもと添い寝をしながら、こんなお話を聞かせてあげましょう。 [おもしろ民話集 40]

昔ある村のお寺に、少しばかり欲ばりな和尚さんと、珍念と万念というふたりの小僧がいました。和尚さんは、檀家からおもちをもらっても、小僧たちに分けてやらずに、いつも一人で食べてしまいます。

今夜も、小僧たちが寝るのを待って、自分の部屋でおもちを焼いていました。やがて、ぷっくりおもちがふくれて、とってもよいにおいです。「おう、焼けたぞ、焼けた」。和尚さんはおもちをつかむと、パタパタたたたいておこげを落とし、それから熱いおもちをプウプウ吹きながら食べます。

戸のすきまからこの様子をのぞき見していた小僧たちは、何とかしてこのおもちを食べたいものだと思いました。そこで二人で相談をして、次の日の晩、寝る前に和尚さんのところへいって、こういいました。「お願いがあります。ぼくたちに新しい名前をつけてくれないでしょうか」 「何? 新しい名前だと?」 「はい、珍念はパタパタ、万念はプウプウという名前にしてもらいたいのです」

和尚さんは、おかしな名前だとは思いましたが、二人がそうしてほしいというならしかたがない、それに早く寝かさないとおもちが食べられません。「よし、わかった」 「ありがとうございます。では、おやすみなさい」 小僧たちは、部屋を出ていきました。

さっそく、和尚さんはおもちを焼きはじめると、まもなくおもちがぷっくりふくれます。和尚さんはおもちを持つと、パタパタとたたいておこげを落としました。すると、珍念のパタパタが飛んできました。「はいパタパタです。何かお呼びでしょうか」。和尚さんはびっくりして、「呼びはせんが、お前も一つ食え」 と、しぶしぶおもちをあげました。

それから二人がプウプウ吹きながら熱いおもちを食べていると、「はいはいプウプウです。お呼びですね」 と、万念のプウプウが入ってきました。「呼びはせぬが、お前もいっしょに食え!」 こわい顔で、和尚さんはいいました。小僧たちは、ニッコリ笑いながら、うれしそうにおもちをいただきました。そして、和尚さんがまごまごしているうちに、おもちは全部なくなっていました。

投稿日:2008年04月01日(火) 09:36

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)