たまには子どもと添い寝をしながら、こんなお話を聞かせてあげましょう。 [おもしろ民話集 40]
昔ある村のお寺に、少しばかり欲ばりな和尚さんと、珍念と万念というふたりの小僧がいました。和尚さんは、檀家からおもちをもらっても、小僧たちに分けてやらずに、いつも一人で食べてしまいます。
今夜も、小僧たちが寝るのを待って、自分の部屋でおもちを焼いていました。やがて、ぷっくりおもちがふくれて、とってもよいにおいです。「おう、焼けたぞ、焼けた」。和尚さんはおもちをつかむと、パタパタたたたいておこげを落とし、それから熱いおもちをプウプウ吹きながら食べます。
戸のすきまからこの様子をのぞき見していた小僧たちは、何とかしてこのおもちを食べたいものだと思いました。そこで二人で相談をして、次の日の晩、寝る前に和尚さんのところへいって、こういいました。「お願いがあります。ぼくたちに新しい名前をつけてくれないでしょうか」 「何? 新しい名前だと?」 「はい、珍念はパタパタ、万念はプウプウという名前にしてもらいたいのです」
和尚さんは、おかしな名前だとは思いましたが、二人がそうしてほしいというならしかたがない、それに早く寝かさないとおもちが食べられません。「よし、わかった」 「ありがとうございます。では、おやすみなさい」 小僧たちは、部屋を出ていきました。
さっそく、和尚さんはおもちを焼きはじめると、まもなくおもちがぷっくりふくれます。和尚さんはおもちを持つと、パタパタとたたいておこげを落としました。すると、珍念のパタパタが飛んできました。「はいパタパタです。何かお呼びでしょうか」。和尚さんはびっくりして、「呼びはせんが、お前も一つ食え」 と、しぶしぶおもちをあげました。
それから二人がプウプウ吹きながら熱いおもちを食べていると、「はいはいプウプウです。お呼びですね」 と、万念のプウプウが入ってきました。「呼びはせぬが、お前もいっしょに食え!」 こわい顔で、和尚さんはいいました。小僧たちは、ニッコリ笑いながら、うれしそうにおもちをいただきました。そして、和尚さんがまごまごしているうちに、おもちは全部なくなっていました。