たまには子どもと添い寝をしながら、こんなお話を聞かせてあげましょう。 [おもしろ民話集 37]
昔あるところに、ジョンという、頭のちょっと弱い男の子がいました。
ある日ジョンの母親が、町まででかける用事ができたため、ジョンにいいました。「町まで行ってくるから、どろぼうに入られないように、しっかり表の戸を見張っているんだよ」 「わかった、しっかり見張っているよ」
ジョンは家の前に立つと、戸をじっと見ていました。でも、いつまでたっても母親が帰ってきません。(どうしたんだろ、何かあったのかなぁ) 心配になったジョンは、母親をむかえにいくことにしました。でも、ジョンが出かけてしまうと、表の戸を見張る者がいなくなってしまいます。「しかたがない。戸を持っていこう」 ジョンは、表の戸をはずすと、肩にかつぎました。すると、むこうから7人の人相の悪い男たちがやってきました。肩に重そうな袋をかついでいる男もいます。
(ひょっとすると、どろぼうかも知れない。この戸をとられないようにしなくちゃ) と、ジョンは戸をかついだまま、目の前の大きな木に登っていきました。うまく木の葉のかげに隠れた時、男たちはその木の下に、輪になってすわりました。
「さぁここで、盗んだ金貨の分け前をすることにしよう」 と、親分みたいな男が、袋から金貨をとりだすと、1枚ずつ子分たちに渡しはじめました。これを見ていたジョンは、(やっぱりどろぼうだ。戸を持ってきてよかったな) と思いましたが、そのうち自分も金貨が欲しくなってきました。それで、「ぼくにも一枚!」 といってしまったのです。
「誰だ!」 びっくりした親分は、あたりを見回しましたが、誰もいません。「何だ、気のせいか」 というと、また残りを分けはじめました。ところがジョンは、だんだん自分が仲間になったような気になりだして、「早くこっちにも渡せ!」 と叫んでしまったのです。
「誰だぁ! 出てこい!」 親分は木の上を見上げると、どなりました。そのとたん、ジョンは真っ青になり、戸を押さえていた手が震えて、ドサッ! 戸を、どろぼうたちの上に落としてしまったのです。「ヒャーッ!」 今度はどろぼうたちがビックリ、震えだしました。そして、「ワシらを捕まえにきたんだぁ」 と、われ先に逃げだしたのです。
木からおりてきたジョンは、金貨を1枚残らず袋の中に入れ、かついだ戸の上にのせました。「どうしてみんなくれたのかなぁ。ぼくは1枚だけでよかったのに」 といいながら、家へ帰りました。とっくにもどっていた母親は、「何だねそのかっこうは?」 「母さんは、表の戸を見張ってろっていったろ。だから、戸がとられないように持っていったんだ」
ジョンがおろした戸の上に、金貨の袋がのっています。「どうしたの、このお金は?」 ジョンがわけを話すと、母親はニコニコ。「まぁ、ジョンたら、何ておりこうなんでしょ」 といいました。