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小ウサギの悪徳商法

たまには子どもと添い寝をしながら、こんなお話を聞かせてあげましょう。 [おもしろ民話集 29]

あるところに、少しばかり土地を持った小ウサギがいました。ある日、袋いっぱいのトウモロコシと豆をとり入れました。小ウサギは、これでひと儲けができないかと、悪知恵を思いつきました。

翌朝早く起きた小ウサギは、メンドリの家へ行ってこういいました。「トウモロコシと豆をひと袋ずつとり入れたので、売ってあげてもいいと思って、まずお宅にうかがいました。どう、たったの1000円でいいですよ。あなたが買わなけりゃ、他の人に話します」 「わかりました。これは、いい買物ですね。どうすればいいですか」 「明日の朝早く、荷車を引いて、私の家へ来てください」
メンドリは安い値段でトウモロコシと豆が買えると喜んで、小ウサギにコーヒーとケーキをごちそうしました。

小ウサギはメンドリにお礼をいうと、キツネの家にむかいました。メンドリにいったのと同じように、トウモロコシと豆を1000円で買わないかといいました。キツネも、こんな安い買物はないと、すぐにこの話にのってきました。そこで、小ウサギは 「それでは、明日の朝8時に、荷車を引いて、私の家へきてください」 といいました。キツネも喜んで、出来たばかりのチーズを小ウサギにあげました。

次に小ウサギがむかったのはオオカミの家です。オオカミも1000円で買う約束をして、明日の朝9時に、荷車を引いて小ウサギの家に行くことになりました。それから小ウサギは、狩人の家に行きました。狩人にも同じ話を持ちかけると、狩人もすぐに買う約束をして、朝10時に小ウサギの家へいくことになりました。

さて、翌朝早く、メンドリが荷車を引いて小ウサギの家にやってきました。小ウサギは 「トウモロコシも豆も家の裏にありますから、荷車を置いていらっしゃい。それが済んだら、ひと休みしてください」 といいました。メンドリはいわれた通り、荷車を裏において、1000円の代金を払うと、小ウサギのすすめられるままに、お茶をごちそうになっていました。
突然、小ウサギがさけびました。「大変だ、キツネがこっちへやってきます!」 メンドリは真っ青になって震えだしました。小ウサギはすぐに、暖炉の中にメンドリを隠してあげました。

小ウサギは、キツネにも裏に荷車を置いてひと休みするようにいって、1000円の代金をもらい、お茶をごちそうしていました。
すると、小ウサギはさけびました。「あっ、オオカミが来た!」 キツネはびっくりして、どこか隠れるところはないかといいます。小ウサギはニワトリのいる暖炉に隠れるようにいいました。キツネは、中にいたニワトリをひとのみにしてしまいました。

オオカミも荷車を裏に置いて、小ウサギに1000円の代金を払うと、小ウサギのすすめる葉巻をふかしながら休んでいました。
すると、小ウサギは 「あっ、狩人が鉄砲を持って来ました!」 という叫びにビックリ。小ウサギはキツネのいる暖炉へ隠してあげると、オオカミは、中にいたキツネをひと飲みにしてしまいました。

狩人が、小ウサギに1000円の代金を払って帰ろうとすると、小ウサギはいいました。「狩人さん、あなたはオオカミがおきらいでしょ」 といいながら、暖炉のほうへ目くばせしました。狩人はすぐに、オオカミがいるのに気がつき、暖炉にねらいをさだめてズドーンと一発打ちました。

こうして、狩人だけが小ウサギの取り入れたトウモロコシと豆を買ったことになります。悪知恵を働かせた小ウサギは、代金4000円と荷車を3台も手に入れたのです。

世の中には、こんな小ウサギのような人間がたくさんいるので、よく気をつけましょうね。

投稿日:2008年01月16日(水) 09:49

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)