たまには子どもと添い寝をしながら、こんなお話を聞かせてあげましょう。 [おもしろ民話集 26]
ある森に、たくさんの動物がすんでいました。大きいのも、小さいのも、強いのも、弱いのもいましたが、仲よく平和に暮らしていました。
あるとき、その森に一頭のライオンがやってきました。ライオンは、手あたりしだい動物をつかまえて、食べてしまうのです。動物たちはこまってしまって、いろいろ相談した上で、ライオンのところへ行ってこういいました。
「ライオンさま、いかがでしょう。私どもは、毎日クジを引いて、クジに当たった者が、あなたさまのお食事になるということにしてもらえませんでしょうか。そのかわり、他の者は自由に森の中をかけまわらせていただきたいのです」
ライオンは、ちょっと考えてから、この提案を了承しました。それから毎日、太陽が真上にくるころに、森の動物たちは集まってクジを引き、クジに当たった者が、ライオンのところへ連れていかれました。
ある日のこと、小さな子ぎつねがクジに当たりました。ライオンのいるしげみやってきて、子ぎつねはいいました。
「ライオンさま、大変なことがおこりましたので、お知らせにまいりました」 「何ごとだ、早くいえ!」
「今日、あなたさまのお食事のクジに、私の弟が当たったのです。さっそく、連れてこようと思いましたら、とちゅうで他のライオンが飛び出してきて、あなたさまの食事をさらっていってしまいました。それで、あなたさまに助けていただこうと、こうしてかけつけてまいったのです」 「何だと? わしより強いライオンがいるというのか」
「とんでもございません。あなたさまの方が強いにきまっています。でも、そのライオンは、あなたさまなんか、3つかぞえるうちにやっつけてやると申していまして……。ライオンさま、よろしかったら、そのライオンのかくれ家へご案内いたします」
子ぎつねはこういうと、ライオンを森の奥へどんどん誘います。やがて子ぎつねは、森の井戸のそばで立ちどまり、ライオンに教えました。「ほら、ごらんください。あそこです」
ライオンは井戸に近づき、中をのぞきこみました。水の底のほうで、大きなライオンがキバをむいています。
「こいつめ、見ておれ!」 と、叫ぶなり、ライオンは深い井戸に飛びこんで、おぼれ死んでしまいました。
それからは、また、森に平和がもどったということです。