こうすれば子どもはしっかり育つ 「良い子の育てかた」 63
近所に、いつも明るく、どんなことにも積極的な2人の子どもがいます。
この子たちの母親が、同世代の子どもをもつ母親とおしゃべりしているのが聞こえてきました。「お宅のお子さんたちは、よくしつけられてうらやましいわ。何か秘訣があるんじゃない。教えてくださらないかしら」 と相手の母親。
「秘訣なんて別にないわ。強いて言えば、子どもに“こうやれ” “こうしろ” と言うのではなく、“毅(兄)ならできる” “由佳(妹)ならできる” と言うようにしていることくらいかしら」
たとえば、学校のテストで悪い成績をとってきたときは 「だめじゃないの、もっとしっかり勉強しなさい」 と叱るのではなく 「毅なら、やればできる、今度がんばってごらん」 と言って励まし、家でちょっとむりかなと思うようなことを言いつけるときは 「由佳なら、きっとできるよ。やってみてごらん」 子どもが、おかしなことをしたときは 「毅は、そんなことはしないと信じてたんだけどなあ、こんどは、ちゃんとやれるよね」 などと声をかけるというのです。
子どもに対して 「偉くなれ」 と言うよりも 「お前は偉くなれる」 と言って導け──ということが以前から言われていますが、この母親は、それを自然のうちに実践してきたにちがいありません。 「毅なら、やればできる」 「由佳なら、きっとできるよ」 という語りかけの中には、子どもへのあたたかい信頼があります。
わが子が人前でちゃんとしたあいさつができなかったとき、多くの母親は 「どうして、あいさつもできなかったの」 というとがめ方をします。しかし これを 「ほんとうは、ちゃんとできるのに、今日はちょっと失敗したのよね」 と言ってやったらどうでしょう。子ども自身に 「この次はきちんとやろう」 という気を起こさせます。こんなさりげない子どもへの信頼が、良い方向へ導く基本のように思うのです。