「読み聞かせ」のすすめ 13
病院の待合室で、子どもに本を読み聞かせる母親と、耳をかたむける子ども。この母と子の姿には、2つの型があります。
子どもが、待合室に備えつけの本の中から1冊をぬいてきて「これを読んで」という。すると母親は「これ、この前読んであげたでしょ」と答え、子どもは、他の1冊を持ってくる。ところが、さあ読み始めた母親にはまったく真剣さがない。字面を棒読みするだけ。子どもも、真剣に耳を傾けることをせず、母親が読み終わらないうちにどんどんページをめくり、最後のページへくるのを待つようにしてパタンと本をとじ、他の本と取りかえてくる。そして、また同じ繰り返し。子どもには、始終、落ち着きがない。──これが、一つの型です。
子どもが本を持ってくる。すでに2度も3度も読み聞かせた本であっても、母親は「○○ちゃんは、この本がすきなのね」といって、まるで初めて読むようにして、ゆっくり、心をこめて読み聞かせていく。子どもは母親に体をよりかからせたまま、身動きひとつしない。読み終わると、「おもしろかったね」「ほんとに、かわいそうなお話ね」などと声をかけ、子どもはこくんとうなずいて、静かに本を返しにいく。──これが、もうひとつの型です。
これを見ていて「やはり、そうだ」と思わされるのは、読み聞かせにしても、日常での母と子の心の通い合わせが、どんなに大切かということです。