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大切な日常での心の通い合わせ

「読み聞かせ」のすすめ 13

病院の待合室で、子どもに本を読み聞かせる母親と、耳をかたむける子ども。この母と子の姿には、2つの型があります。

子どもが、待合室に備えつけの本の中から1冊をぬいてきて「これを読んで」という。すると母親は「これ、この前読んであげたでしょ」と答え、子どもは、他の1冊を持ってくる。ところが、さあ読み始めた母親にはまったく真剣さがない。字面を棒読みするだけ。子どもも、真剣に耳を傾けることをせず、母親が読み終わらないうちにどんどんページをめくり、最後のページへくるのを待つようにしてパタンと本をとじ、他の本と取りかえてくる。そして、また同じ繰り返し。子どもには、始終、落ち着きがない。──これが、一つの型です。

子どもが本を持ってくる。すでに2度も3度も読み聞かせた本であっても、母親は「○○ちゃんは、この本がすきなのね」といって、まるで初めて読むようにして、ゆっくり、心をこめて読み聞かせていく。子どもは母親に体をよりかからせたまま、身動きひとつしない。読み終わると、「おもしろかったね」「ほんとに、かわいそうなお話ね」などと声をかけ、子どもはこくんとうなずいて、静かに本を返しにいく。──これが、もうひとつの型です。

これを見ていて「やはり、そうだ」と思わされるのは、読み聞かせにしても、日常での母と子の心の通い合わせが、どんなに大切かということです。

投稿日:2008年12月01日(月) 09:09

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)