「読み聞かせ」のすすめ 10
母から子への「読み聞かせ」をはじめてから1年7か月という方からうかがった話です。
「子どもが、心のやさしい思いやりのある人間に育ってほしいという願いで、4歳の長男を相手に絵本の読み聞かせを始めました。子どもが、夜、床に入ったときとか、雨で外へ遊びに行けないとき、私のパートの休みの日など、時間や場所はきちんと決めずに、自由にしました。
ところが半年ほどして、まったく思いがけないことが起こりました。起こったという言い方はちょっと変かもしれませんが、母親の私の方が、すっかり絵本のとりこになってしまったのです。すぐれた絵本は、りっぱな文学作品にも匹敵するというのはほんとうなのですね。
「かさ」「ちからたろう」「しずかなおはなし」「てぶくろ」「こぐまのぼうけん」「もちもちの木」……、題名をあげたらきりがないほどです。子どもに何かを伝えると同時に、私自身がどんなにたくさんのことを学んだことでしょうか。
今、わが家の居間には80冊ほどの絵本が並んでいます。わが家のいちばんの宝ものです」
子どもといっしょに自分の心が高まっていくよろこび──これこそが、「読み聞かせ」のダイゴ味ではないでしょうか。