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団地の 「階段読み聞かせ」

「読み聞かせ」のすすめ 16

知人から、おもしろい「読み聞かせ」の話を聞きました。

砂場・スベリ台・木馬などがある団地内の遊び場は、午後3時ごろになると、幼児と母親でいっぱいになります。子どもたちを見守りながら、母親たちは井戸端会議ならぬ「砂場端会議」です。

「あんなふうにして過ごしてしまうのは、もったいない」と感じたのでしょう。ひとりのお母さんが、砂場へ絵本を2冊持って行き、子どもをしばらく砂場で遊ばせた後で「ねぇ、みんな、おもしろい絵本を読んであげようか」と、子どもたちに声をかけました。すると、5、6人の幼児たちが「わぁ、読んで、読んで」と集まってきました。「本なんか見向きもしない」と思っていたのに、うれしい誤算だったようです。

こうして、1回15分ずつくらいの「砂場読み聞かせ」が始まりました。喜んだのは子どもたちだけではありません。「うちの子が絵本をあんなに喜ぶとは思わなかった」と、大いに喜んだのは、むしろ若いお母さんたちでした。

やがて、この読み聞かせは、外の強い日差しなどをさけるために、アパートの上がり口の石段に場所を移しました。階段に、ひな壇みたいに子どもを腰かけさせ、お母さんは一番下から読み聞かせるのです。週に平均2回ずつ始めて、もう半年。今では7人のお母さんの楽しみにもなっています──と。

読み聞かせは、本と時間があれば、どこでもできるのです。要は、親の心構えです。

投稿日:2008年12月22日(月) 09:28

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)