「読み聞かせ」 のすすめ 8
6年生の長男に、10年以上も本を読んでやってきた結果、児童文学のファンになったのは私だけ。子どもはマンガばかりに夢中で、本はほとんど読みません。それでもいつかはと、期待して読み聞かせをしてきたのですが、その期待も実らないまま、親離れしていく時期になったのです。寝る前の読み聞かせは、子どもにとって、それが眠り薬のようなものだとしても、親子の安らぎの時でした。それで充分じゃないかと言い聞かせているのですが……。
これは、ある新聞に投稿されていた主婦の声ですが、この一文からいろいろなことを考えさせられます。まず、子どもが自分で本を読むようにならなかったからといって、それほど嘆く必要はないということです。長い間の読み聞かせで、子どもの内面には、少なくとも文学的な読み物を受け入れる素地は育っているはずです。今後なにか刺激さえあれば、必ず自分で本を手にするようになります。
もしも、その素地さえ育たなかったのだとすれば、読み聞かせた本の質に問題があったのかも知れません。親の選んだ児童文学作品と子どもがほんとうに喜ぶ作品には、必ず差があるからです。
それから、マンガばかりに夢中でとありますが、あまりマンガをばかにするのもよくありません。最近のマンガには、かなりレベルの高い作品も多く、歴史もののマンガなどには、文字で記述されている以上によく検証したものもあって、感心することさえあります。育てられた読書の素地のおかげで、新しい楽しみを発見したのかもしれません。
いずれにせよ、10年以上も続けられた「親子の安らぎの時」、素晴らしいではありませんか。母親のぬくみを充分注ぐことができたのですから。子どもは生涯それを忘れることはないでしょう。