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かわいそうな悪魔

たまには子どもと添い寝をしながら、こんなお話を聞かせてあげましょう。 [おもしろ民話集 25]

むかし、ある村の農夫が、1ぴきのめ牛を飼っていました。春になると、め牛を牧草地へ連れて行って、草を食べさせます。「神様、いつも私らをお守りくださり、ありがとうございます。今年もこのめ牛に、草をたっぷり食べさせてください。お願いいたします」 と、祈りました。

この様子を、悪魔がしげみのかげから見ていました。「人間ってやつは、何でもうまくいくと神様に礼をいう。悪くいくと必ずおれのせいにする。チクショー、今に見ておれ」

それから2、3日たちました。農夫のめ牛が沼に落ちて、出られなくなりました。それを見て、農夫はいいました。「ひどいことをしやがる。悪魔のやつのいたずらだ」。悪魔はこれを聞いて 「やっぱり、おれの思っていた通りだ」 とつぶやきました。

農夫が、め牛をひっぱりあげるのを手伝ってくれる人を呼びにいってるあいだに、悪魔はめ牛を、ひっぱりあげておきました。「今度こそ、おれもお礼をいわれるにちがいない」 と、ニコニコしていました。

やがて、もどってきた農夫は、め牛が岸にあがっているのを見て大喜び。「神様、よくぞめ牛を引っぱり上げてくださいました。お礼を申し上げます」 と、いいました。

さて、悪魔は何といったでしょう。想像してみてね。

投稿日:2007年12月13日(木) 09:35

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)