たまには子どもと添い寝をしながら、こんなお話を聞かせてあげましょう。 [おもしろ民話集 25]
むかし、ある村の農夫が、1ぴきのめ牛を飼っていました。春になると、め牛を牧草地へ連れて行って、草を食べさせます。「神様、いつも私らをお守りくださり、ありがとうございます。今年もこのめ牛に、草をたっぷり食べさせてください。お願いいたします」 と、祈りました。
この様子を、悪魔がしげみのかげから見ていました。「人間ってやつは、何でもうまくいくと神様に礼をいう。悪くいくと必ずおれのせいにする。チクショー、今に見ておれ」
それから2、3日たちました。農夫のめ牛が沼に落ちて、出られなくなりました。それを見て、農夫はいいました。「ひどいことをしやがる。悪魔のやつのいたずらだ」。悪魔はこれを聞いて 「やっぱり、おれの思っていた通りだ」 とつぶやきました。
農夫が、め牛をひっぱりあげるのを手伝ってくれる人を呼びにいってるあいだに、悪魔はめ牛を、ひっぱりあげておきました。「今度こそ、おれもお礼をいわれるにちがいない」 と、ニコニコしていました。
やがて、もどってきた農夫は、め牛が岸にあがっているのを見て大喜び。「神様、よくぞめ牛を引っぱり上げてくださいました。お礼を申し上げます」 と、いいました。
さて、悪魔は何といったでしょう。想像してみてね。