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キツネとカワウソ

たまには子どもと添い寝をしながら、こんなお話を聞かせてあげましょう。 [おもしろ民話集 21]

冬が近づいたある日、キツネとカワウソがばったり会いました。すると、キツネが言いました.
「これはいいところで行きあった。どうだい。夜は長いし、これから、お互いに、よばれあいっこをしようじゃないか」         
正直もののカワウソは 「いいとも」 と答えました。キツネが 「よばれるのは、おれが先だぜ」 と言うと、やっぱり 「いいとも」 と答えました。

さっそく次の日、カワウソはたくさん魚をとってきて、キツネを招きました。キツネは、ひょいひょいやってきました。そして腹がはちきれそうになるまで食べると、のったりのったり帰って行きました。

次の日は、カワウソがよばれる番です。カワウソは 「なにを食わせてくれるのだろう」 と楽しみに、キツネのところへ行きました。 
ところがキツネは、なんにもしていません。
「きょうは山の神さまのお使いでいそがしくて、ごめん、あしたね」
カワウソは 「それは、たいへんだったね」 と言って帰りました。
ところが次の日の夜も、キツネは同じことを言うばかりです。「きょうも山の神さまのお使いでいそがしくてね。神さまの言いつけだもの、しかたがないんだ」
カワウソは、キツネのうそに気がつきました。でも、腹をたてずに、「それはたいへんだったね」 と言って帰りました。

さて、次の日、キツネがやってきて、カワウソにたのみました。
「あしたは、きっとよぶから、魚のとり方を教えてくれないか」
カワウソは、ちょっと考えてから答えました。
「ああ、そんなこと簡単だよ。夜なかに川に行って、しっぽを水にひたしておくんだ。すると、魚が寄ってきて、しっぽに食いつくんだ。うんと食いつかせておいて、しっぽを持ち上げればつれるよ」
これを聞いたキツネは 「ふん、魚のとり方のひみつを教えるなんて、カワウソもばかなやつだ」 と笑いながら帰って行きました。そして、夜おそく川へ行くと、しっぽを水につけました。しばらくすると、しっぽの先になにかがぴたっとくっつきはじめました。 「しめしめ、魚がどんどん食いついてくるわい」 キツネは、むねをわくわくさせながら、そっと、しっぽをもちあげてみました。もう、もちあげられないほどです。キツネは、もっと、もっとと、がまんしました。

やがて、夜が明けてきました。
キツネは、そっと、おしりをもちあげました。ところが、しっぽは動きません。
「うふふ、こいつは大漁だぞ。よし、いっぺんにつりあげてやれ」
キツネは 「そ一れっ」 と、しっぽを引きあげました。ところが、しっぽがちぎれてしまいそうで、思わず悲鳴をあげました。はじめにぴたっ、ぴたっと食いついたのは、川の水がこおった氷のかけらです。そして、夜明けになると、きつねのしっぽにかみついたまま、川じゅうの水がこおりついてしまったのです。
「こいつは、こまったぞ、人間に見つかったら、キツネ丼にされてしまう」
キツネは、なんども、おしりをもちあげたり、おろしたりしていましたが、とうとう、しっぽの皮をひんむくと、いててて…いててて…、泣きべそをかきながら山へ帰っていきました。

投稿日:2007年11月15日(木) 09:33

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)