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貧乏神

たまには子どもと添い寝をしながら、こんなお話を聞かせてあげましょう。 [おもしろ民話集 17]

昔むかし、あるところに平作という貧乏な百姓がいました。働き者のつもりでしたが、いくら働いても暮らしがラクになりません。自分でもあきれてしまって、家の中にひっくりかえって、毎日寝てばかりいました。すると、平作が寝てばかりいるので、奥さんも働く気がしなくなって、掃除さえしないために、家の中はほこりだらけです。

そんなある日、平作が押入れを開けてみると、ガラクタの上で、小さくてやせたじいさんが眠っていました。
「おいおい、お前は誰だ?」と平作。「わしは、貧乏神だ」とじいさん。
「どうして、オレの家にいるんだ」「お前の家があんまり居心地がいいもんで、もう半年も前からやっかいになってる」
これを聞いて平作はびっくりしました。オレの家が貧乏なのも、この貧乏神がいるからだと思いました。でも、どうしていいか名案が浮かびません。そこで、奥さんと相談して、じいさんにわからないように引越しをしようと、準備をはじめました。

ところが、押入れの中でガサゴソ音がします。何だろうと平作が押入れを開けると、貧乏神がわらぐつを作っています。
「おい、じいさん、そんなもの作ってどうする気だ」「お前たちが、明日朝早く引越しするようだから、わしもついていこうと思ってな」
それを聞くと、平作はがっかり。ついてきた奥さんもそこにへたりこんでしまいました。

「どこへ行ってもどうせ同じ苦労をするんじゃ、ここにいて、もうひとふん張り働くことにするか」と、夫婦はまるで人が変わったように、朝早くから夜遅くまで働きだしました。

そのうち、もともとやせていた貧乏神のじいさんは、もっともっとやせこけて、骨と皮だけになってしまいました。「やれやれ、こう働かれては、もうこれ以上この家には住めないな」とブツブツ。こうして、いつのまにか貧乏神はいなくなってしまいました。

投稿日:2007年10月10日(水) 09:32

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)