たまには子どもと添い寝をしながら、こんなお話を聞かせてあげましょう。 [おもしろ民話集 17]
昔むかし、あるところに平作という貧乏な百姓がいました。働き者のつもりでしたが、いくら働いても暮らしがラクになりません。自分でもあきれてしまって、家の中にひっくりかえって、毎日寝てばかりいました。すると、平作が寝てばかりいるので、奥さんも働く気がしなくなって、掃除さえしないために、家の中はほこりだらけです。
そんなある日、平作が押入れを開けてみると、ガラクタの上で、小さくてやせたじいさんが眠っていました。
「おいおい、お前は誰だ?」と平作。「わしは、貧乏神だ」とじいさん。
「どうして、オレの家にいるんだ」「お前の家があんまり居心地がいいもんで、もう半年も前からやっかいになってる」
これを聞いて平作はびっくりしました。オレの家が貧乏なのも、この貧乏神がいるからだと思いました。でも、どうしていいか名案が浮かびません。そこで、奥さんと相談して、じいさんにわからないように引越しをしようと、準備をはじめました。
ところが、押入れの中でガサゴソ音がします。何だろうと平作が押入れを開けると、貧乏神がわらぐつを作っています。
「おい、じいさん、そんなもの作ってどうする気だ」「お前たちが、明日朝早く引越しするようだから、わしもついていこうと思ってな」
それを聞くと、平作はがっかり。ついてきた奥さんもそこにへたりこんでしまいました。
「どこへ行ってもどうせ同じ苦労をするんじゃ、ここにいて、もうひとふん張り働くことにするか」と、夫婦はまるで人が変わったように、朝早くから夜遅くまで働きだしました。
そのうち、もともとやせていた貧乏神のじいさんは、もっともっとやせこけて、骨と皮だけになってしまいました。「やれやれ、こう働かれては、もうこれ以上この家には住めないな」とブツブツ。こうして、いつのまにか貧乏神はいなくなってしまいました。