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「ドン・キホーテ」 のセルバンテス

今日10月9日は、ユーモア、風刺、空想に満ちた作品「ドン・キホーテ」を著したスペインの作家セルバンテスが、1547年に生まれた日です。

騎士道物語を読みふけっていたドン・キホーテは、いつしか自分が物語の主人公になってしまいました。よろいかぶとに身をかため、やりを持ち、よぼよぼのやせ馬にまたがって、武者修業にでかけました。けらいは、ロバにのった小作人のサンチョ・パンサです。ある農家の風車を、巨大な怪物と思いこんだキホーテは、やりをかざして、もうぜんと風車におそいかかっていきました。

セルバンテスの小説『ドン・キホーテ』です。17世紀はじめのスペインの小説家セルバンテスは、当時流行の騎士道物語とは、ちがったかたちの読物を書こうとしました。『ドン・キホーテ』では、こっけいな英雄気どりの騎士を登場させ、ユーモアあふれる話のなかで、世の中のむじゅんをするどく風刺しています。なにをやってもうまくゆかないドン・キホーテのように、セルバンテスの人生も、なかなか芽がでませんでした。

セルバンテスは、1547年にスペインの首都マドリードに近いアルカラ・デ・エナーレスに生まれました。父は町医者でしたが暮らしは貧しく、あちこちにうつり住みました。セルバンテスは学校にもあまり通えませんでした。23歳のときにイタリアへわたり、軍隊にはいりました。1571年のレパント海戦にくわわって、セルバンテスは負傷し、一生左手がつかえなくなってしまいます。それでも、地中海の各地でいさましく戦い、スペイン海軍の司令官から表彰されたりしました。しかし、スペインに帰るとちゅう、海賊につかまってしまい、アフリカのアルジェリアで5年間も奴れい生活をつづけました。

1580年、ようやくマドリードへもどってきました。それからは、なにをやってもうまくいきません。田園小説『ラ・ガラテア』や、戯曲『ヌマンシア』などを発表しましたが、これも、評判は良くありませんでした。セルバンテスはしかたなく、アンダルシアへいって食糧を集める役人になりました。ところが、銀行が破産したりして、ろう屋にいれられるようなしまつです。

ほかの地へ、またほかの地へ、といったふうに10年ちかくも歩きまわったあげく、ふたたびマドリードにもどってきました。1604年、びんぼうのどん底でなかばやけっぱちで書きあげたのが『才知あふれる郷士ドン・キホーテ・デ・マンチャ』でした。これが、セルバンテス自身もびっくりするほど人気を集めました。1615年には、続編も出版しました。のちに、人間をえがいた近代小説のはじまりと評された本です。しかし、セルバンテスの生活は最後まで楽にはなりませんでした。

なおこの文は、いずみ書房「せかい伝記図書館」(オンラインブックで「伝記」を公開中)5巻「ミケランジェロ、レオナルド・ダ・ビンチ、ガリレオ」の後半に収録されている7名の「小伝」から引用しました。近日中に、300余名の「小伝」を公開する予定です。ご期待ください。

投稿日:2007年10月09日(火) 09:09

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)