● 不思議でしかたがなかった 木の葉からもれる光のつぶ
秀樹少年は、考えながら遊ぶことが好きでした。幼いときは、とくに積木が好きでした。自分の考えで、自由にいろいろな形のものを作ることができたからです。小学校へあがると、自分の知らないことなら、どんなことにも興味をもつようになりました。「ふしぎだなあ」 「どうしてだろう」 と考えるのが楽しかったのです。
小学校へあがるまえ、兄たちと外でかくれんぼをしていたときのこと。自分が鬼で、みんなをさがしつかれた秀樹は、木かげの草の上にねころびました。すると、木の枝を見上げた秀樹の目に、とびこんできたものがあります。たくさんの葉のあいだからもれて、まるで踊っているように、きらきらかがやいている太陽の光のつぶです。
「どうして、あんな光りかたをするのだろう」
秀樹は、かくれんぼの鬼だったのもすっかり忘れ、いつまでも、ゆれ動く葉っぱと光を見つめつづけました。少年のときから、科学者らしい心をもっていたのかもしれません。
でも、本を読むのも、たいへん好きでした。アンデルセンやグリムなどの童話のほか、父の本だなに並んでいた本まで読みました。祖父から家で漢学を習っていましたから、意味はわからなくても、むずかしい本も読めたのです。とくに好きだったのは太閤記です。豊臣秀吉がどんどん出世していって、ついには天下をとる話に、胸をときめかせて夢中になりました。
湯川秀樹(1907〜1981)──不思議に思う心を育てて日本で最初にノーベル賞にかがやいた理論物理学者。
詳しくは、いずみ書房のホームページにあるオンラインブック「せかい伝記図書館」をご覧ください。近日中にアップする予定ですので、ご期待ください。