● 11歳で、たった一人世の中にほうりだされる
ゴーリキーの書いた、もっとも有名な作品は『どん底』ですが、少年時代のゴーリキーの生活は、ほんとうに、どん底でした。
ゴーリキーが4歳のときに家具職人だった父が亡くなると、母の実家へひきとられ、それから7年間、まるで動物のようにあつかわれて、毎日なぐられる暗い日がつづきました。そして11歳のときに母が亡くなると、小学校もわずか1年でやめさせられ、たった一人、世の中へほうりだされてしまいました。
寝るところもお金もなく、友だちもいない。どんなに泣いても、だれ一人、助けてはくれない。こんななかで、ゴーリキーははたらきはじめました。小さなくつ屋の小僧、製図工の見習い、船の皿洗い、塑像販売店の小僧、しばいの下っぱ役者、パン焼き職人……など、大人にどなられ、こづきまわされながら、毎日たおれるまではたらきました。主人に松の枝でなぐられて、背中が枕のようにはれあがり、病院で、からだから42個の木切れを抜きとってもらったこともありました。また、古いピストルを買ってきて、ほんとうに胸にあてて発射したこともありました。さいわい弾は心臓をはずれて一命をとりとめましたが、とにかく、なんのために自分は生きているのかわからないほど、苦しかったのです。
ところが、こんなゴーリキーを救ったものが、たった1つだけありました。本です。かくれるようにして本を読みつづけるうちに、「自分はけっしてひとりぼっちではない」 と信じるようになり、やがて、貧しい人びとを見つめる作家へと成長していきました。
ゴーリキー(1868〜1936)──11歳で両親を失い世の中へほうりだされ、貧しい人びとのことを考えつづけたロシアの作家。
詳しくは、いずみ書房のホームページにあるオンラインブック「せかい伝記図書館」をご覧ください。なお、「せかい伝記図書館」では、世界と日本の歴史に名を残した最重要人物100名の「伝記」、重要人物300名の「小伝」をすべて公開する計画です。「伝記」終了後、ひきつづきゴーリキーを含む「小伝」に移りますので、ご期待ください。