● 古い大工道具で遊びながら、物づくりのおもしろさを知る
蒸気機関を発明したジェームス・ワットは、スコットランドの西海岸のグリノックという港町に生まれました。父は船大工でした。船大工といっても、グリノックは小さな港町でしたから、家も建てれば棺おけも作るという、貧しい大工でした。
少年時代のワットは、いろいろな物を作る父を誇りにしていました。そして、父の仕事場へ行っては、自分でもさまざまな物を作るのが、なによりも楽しみでした。父は、小さいワットに、古い大工道具を与えて、自由に遊ばせてくれたのです。
ワットは、とくに、起重機やポンプなどの模型を作るのが、いちばん好きでした。一つの模型に取り組むと、時間も食事も忘れてしまうほどで、うまくいくまで何度でも作り続ける研究心とねばり強さは、父もおどろくほどでした。
実物そっくりの模型を作りあげるのを見て、まわりの人たちは 「この子の手は、もう、りっぱな財産だ」 と、その器用さをほめました。自由に物を作って楽しむわが子をあたたかく見守った父の深い愛が、ワットをそのように育てたのかもしれません。学校では、数学や物理が得意でした。
「数学器械を作る仕事を習いたい」──19歳になると、この夢を抱いてロンドンへ行きました。そして、1年過ぎると郷里の近くのグラスゴーへもどり、グラスゴー大学の中に数学器械の店を開きました。少年時代の夢をふくらませつづけたのです。やがて、大学にたのまれて模型機関の修理に打ち込むうちに、蒸気機関発明への道を進んで行きました。
ワット(1736〜1819)──少年時代の模型作りから、蒸気機関の発明へまい進した技術者。
詳しくは、いずみ書房のホームページにあるオンラインブック「せかい伝記図書館」をご覧ください。なお、「せかい伝記図書館」では、世界と日本の歴史に名を残した最重要人物100名の「伝記」、重要人物300名の「小伝」をすべて公開する計画です。「伝記」終了後、ひきつづきワットを含む「小伝」に移りますので、ご期待ください。