● 寝るところもなく、公園のベンチや道ばたで夜を明かす
チャップリンの両親はまずしい旅芸人でしたが、チャップリンが6歳のときに父が亡くなり、7歳のときには、母が苦しい生活のために精神病にかかって、ときどき、病院へ入院するようになってしまいました。
母が入院しているとき、あとにのこされたのは、チャップリンと兄のシドニーのふたりきりです。チャップリンは、母のことを思うと悲しくて、あしたの生活のことを考えると心ぼそく、小さなアパートの屋根裏の暗い部屋で、兄を見つめながら涙をながしました。
はじめのうちは、アパートの管理人のおばさんが、パンやスープをもってきてくれましたが、それも、わずかなあいだでした。ふたりは、床屋の手つだいをしたり、マーケットの売り子をしたりして、いっしょうけんめいに働きました。でも、食べるのがやっとです。アパートの部屋代は、とても払えません。そんなとき、ふたりは、寝るところもなくなって、公園のベンチや道ばたで、夜をあかしました。
やがて、母の病気はよくなり、まずしくても、母子3人いっしょにくらせるようになりました。そして12歳になったとき、やっと、チャップリンに幸せがおとずれました。母が、むかし歌手だったころの知りあいにたのんでくれたおかげで、「シャーロック・ホームズ」という劇の子役に出演することができたのです。母のやさしさに心から感謝したチャップリンは、5年後には、こんどは兄のシドニーのおかげでカルノ一座という名高い劇団に入ることができて、世界の喜劇王への道を歩んでいきました。
チャップリン(1889〜1977)──山高帽、だぶだぶのズボン、大きな靴で世界じゅうの人びとを笑わせた喜劇王。
詳しくは、いずみ書房のホームページにあるオンラインブック「せかい伝記図書館」をご覧ください。
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