● 習字を書いていると、いつのまにか字が絵になっていた
雪舟は、7歳か8歳のころ、生まれた家の近くの寺に小僧としてあずけられ、坊さんになる修業をはじめました。
ところが、しばらくすると、坊さんになる勉強には、あまり身がはいらなくなってしまいました。習字を習っていると、いつのまにか、字が絵になってしまうのです。
ある日雪舟は、とうとう、きびしい罰をうけました。こらしめのために寺の本堂の柱に、くくりつけられてしまったのです。
雪舟は、すぐ絵をかいてしまう自分が悪いとわかっていましたから、はじめは、がまんしました。でも、夕方ちかくになってくると、だれもいない本堂にひとりぼっちでいるのがさみしく、いつのまにか涙をこぼしはじめました。
やがて、そこへ、そろそろ雪舟を許してやろうと、おしようさんがやってきました。すると、雪舟は、うつむいていっしょうけんめいに足の指を動かしています。おしょうさんは、ふしぎに思って近づいてみました。そして、思わず 「あっ」 と声をあげてしまいました。雪舟の足もとに、1匹のネズミがいたからです。
ところが、ネズミは動こうとしません。よく見ると、雪舟が床に落ちた涙をすみのかわりにして、足の指でかいたネズミです。
それからというもの、おしようさんは雪舟が絵をかいても、もう、けっしてしかりませんでした。
雪舟(1420〜1506)──少年時代から墨で絵をかきつづけ、生涯をかけて日本の水墨画を完成させた画僧。
詳しくは、いずみ書房のホームページにあるオンラインブック「せかい伝記図書館」をご覧ください。近日中にアップする予定ですので、ご期待ください。