● ひとりで山にのぼり、りっぱな人間になるように祈る
林蔵は、貧しい農家に生まれましたが、幼いころから 「人のために、りっぱな仕事をする人間になりたい」 と、思っていました。
12歳のときのこと、村の人たちにつれられて筑波山へ行きました。すると、夜中に、旅館は大さわぎになりました。林蔵が、いなくなってしまったのです。みんなは、夜、外へでて、てんぐにでも、さらわれたのではないかと心配しました。
ところが、朝になると、林蔵は、なにもなかったような顔をして、もどってきました。手のひらを見ると、黒くすすけて、やけどをしています。「どこへ行ってたんだ」 と聞けば 「立身岩で、お祈りをしてたんだよ」 と答えて、けろりとしています。
筑波山のなかに、立身岩とよぶ高さ9メートルの大きな岩が立っていて、この砦の前で人に知られないようにして熱心に祈れば、人びとにみとめられる、りっぱな人間になれると、いわれていました。林蔵は、こっそり、ここへきて、手のひらに油をたらし、その油につっこんだ燈しんに火をともして、ひと晩じゅう、一心に、お祈りをしてきたのです。
やがて、15歳を数えるころになった林蔵は、常陸国 (茨城県) から東京へでて、測量術にすぐれた地理学者のもとで学ぶようになり、日本各地を南から北へ西から東へ歩きつづけながら、探検家への夢をひろげていきました。
間宮林蔵(1775?〜1844)──樺太が島であることをはじめて明らかにして、いまも世界地図に間宮海峡の名を残す探険家。
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http://www.izumishobo.co.jp/onlinebook/c02_denki/mamiya/index.html