● 刀のつばを箱ごともらい、家来に分けてあげる
紀州 (和歌山) 藩の第2代目の藩主徳川光貞の4男として生まれた吉宗は、生まれつき、性格が、おおらかでした。
ある日のこと、父が、刀のつばのたくさん入った箱を取りだしてきて、子どもたちに、つばを与えるから、どれでもすきなものを取るように言いました。刀のつばは、武士にとって、たいせつなものです。兄たちはよろこんで、自分のすきなものを、ひとつずつ選んで取りました。
しかし、吉宗だけは取ろうとしません。静かにすわったままです。そこで、ふしぎに思ったった父が 「そちは、どうしたのじゃ。つばなど、ほしくないのか」 と、たずねました。すると、吉宗は答えました。
「わたしは、兄上たちが取られた残りのつばを、箱ごと、いただこうと思っております」
兄たちは、びっくりしました。でも、これを聞いた父は、吉宗の腹の大きさにすっかり感心して、ほんとうに箱ごと与えてしまいました。ところが、父が感心したのは、これだけではありませんでした。箱をかかえて自分の部屋へもどった吉宗は、箱の中のつばを、ひとつ残らず、家来たちにやってしまったというのです。
13歳で越前国 (福井県) の藩主になった吉宗は、やがて31歳で将軍となり、人びとの心のよくわかる将軍と、たたえられるようになりました。
徳川吉宗(1684〜1751)──倹約をすすめ町人たちの訴えを聞き「享保の改革」を行なって江戸幕府をたてなおした第8代将軍。
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