● 世の中の争いに疑問をいだき、ひとり海と向き合って考えた
幼いころの日蓮は、農業のかたわら漁師をしていた父から、いろいろなことを教わりながら成長しました。とくに、仏教の話をたくさん聞いて育ちました。そして、12歳のころになると、2つの大きな疑問をいだくようになっていました。
「源氏と平氏の壇ノ浦の合戦では、天皇が海に身を投げられた。それから36年後の承久の乱では、3人の上皇が島流しにあわれた。日本は仏教がさかんなのに、だれもが仏教を信仰するのに、どうして、こんなことがおこるのだろう」
「日本には、浄土宗、天台宗、禅宗など、いくつもの仏教があって、おたがいに勢力を競いあっている。仏教をおこしたシャカの教えはひとつなのに、どうしてだろう」
日蓮は、父に聞きました。村の人たちにも聞きました。でも、よくわかりません。わかったのは、世の中には争いが絶えないということです。暗い心につつまれた日蓮は、いつも、ひとりで海とむきあって考えました。
しかし、やはりわからないことばかりです。やがて、近くの清澄寺(せいちょうじ)へ入り、寺の本を読みつくすほど勉強しましたが、勉強すればするほど疑問がふえるばかり。15歳をすぎたころ、かみをそりおとした日蓮は父母に別れをつけ、真実を求めて、鎌倉から京都へと、きびしい修行の旅にでました。
日蓮(1222〜1282)──自分の信じる法華経のために生涯たたかい続けた日蓮宗の開祖。
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