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猫の皿

「おもしろ古典落語」の7回目は、『猫の皿』という、お笑いの一席をお楽しみください。
 
(田舎を歩き回って、骨とうの掘り出し物を見つけては安く買いたたき、江戸の好事家へ高く売る、[果師(はたし)] という商売人がありました。ある果師が、とある川岸の茶店で休んでいて、何気なく土間を見ると、猫が飯を食べています。猫自体はどこにもいるようなものですが、皿を見て果師は、内心驚きました。「絵高麗の梅鉢の皿」といって、安く見積っても三百両は下らないという代物。とても猫に飯をあてがうような皿ではありません。皿の価値を知らないと見て取った果師は、何とかおやじをだまして皿を手に入れようと、話しかけます)

「おやじさん、いい猫だねえ。チョチョチョ…ああ、やってきた。あははは…かわいいもんだね」「あ、お客さま、その猫はかまわないほうがようございます。これこれ、お客さまのお召し物に毛をつけちゃだめだよ」「いや、おれは猫が好きだから…人の膝の上で、のどをゴロゴロ鳴らしてるよ。人なつっこいね」

「お客さまは、猫がお好きでいらっしゃるとみえて、猫でもわかるんでしょうね」「うん、おれんとこにも猫がいたんだけどね、どっかへ行っちまやがった。うちのかかぁが『おまえさん、どこか行ったときに、猫一匹もらってきとくれ』っていうけど、あんまり小さいうちにもらってくると、いなくなったり、死んじゃったりしちゃうし…まあ、このくらいの猫だったら、きっと大丈夫だと思うんだが、どうだい、おやじさんこの猫を、おれにくれないかい?」

「へぇ?」「おいおい、そんな変な顔をしないでおくれよ。そのかわり、ただでもらおうってんじゃない。小判3枚、これをこれまでの鰹ぶし代としてあげようじゃないか。見れば、奥のほうに、まだ2〜3びきいるみたいだな」「そりゃそうですが、いえねぇ、婆さんに先に逝かれちまって、さみしくてしょうがねぇもんですから、やはり、あっしになじんでいますから…」「一匹ぐらいいいじゃねぇか。うちには子どももいねぇし、可愛がるよ…これ鰹ぶし代だ、取ってくんねぇ」「3両だなんて大金、そんな、あなた…、ありがとう存じます」

「あははは、ごらんよ、おやじさん。懐ん中へ入れたら、ゴロゴロいって眠っちまった、可愛いもんだね。じゃ、まぁ宿へついたら、うまいもんを食わしてやるからな…あぁ、この皿もってって、これで食べさせてやろう、ね、この皿…」「あっ、それだけは…こっちにお椀がありますから、これをもっていってください」「いいじゃねぇか、こんな汚い皿なんか」

「いえ、こんな皿といわれますが、お客さまはご存じかどうか知りませんが、これは [絵高麗の梅鉢の皿] といって、なかなか手に入らない品なんでございますよ。こんな茶店のおやじに落ちぶれてはおりますが、どうしてもこの皿だけは手放す気になりませんで…どうか勘弁してください。それはもう、だまってたって、2百両3百両の値打ちのある品なんです」

「ふーん、そうかい。しかし、なんだってそんな値打ちもんで、猫に飯を食わせるんだい?」

「へぇ、それがお客さま、おもしろいんでございますよ。この皿で猫に飯を食わせると、ときどき猫が3両で売れるんでございます」


「2月4日にあった主なできごと」

1181年 平清盛死去…平安時代末期の武将で「平氏にあらざれば人にあらず」といわれる時代を築いた 平清盛 が亡くなりました。

1703年 赤穂浪士の切腹…前年末、「忠臣蔵」として有名な赤穂浪士46名が、吉良義央(よしなか)邸に討ち入り、主君浅野長矩(ながのり)のあだ討ちをしたことに対し、江戸幕府は 大石良雄(内蔵助) ら赤穂浪士46名に切腹を命じました。

1945年 ヤルタ会談…第2次世界大戦でドイツの敗戦が決定的になったことで、ソビエトのクリミヤ半島にあるヤルタに、アメリカ合衆国大統領ルーズベルト、イギリス首相チャーチル、ソビエト連邦(ソ連)首相スターリンの3国首脳が集まって、「ヤルタ会談」がはじまりました。

投稿日:2011年02月04日(金) 06:19

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)