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「フェルメール展」大盛況

今週の火曜日(28日)、スケジュールに余裕があったのと久しぶりの秋晴れに誘われて、かねてから行ってみたかった「フェルメール展」へ出かけてみました。前日、株価がバブル崩壊後最安値、円高加速、景気の先行きに悲観論続出などとニュースで騒がれていても、上野公園はそんな世間の情勢などとは無縁であるかのようにおだやかで、たくさんの人出でにぎわっていました。

11時半ごろに東京都美術館に着いたところ、6種類の展覧会が開催中なのに他の展覧会はまったくの閑散、「フェルメール展」のチケット売り場にだけ長蛇の列ができています。入場券をやっと手に入れ、さあ入場と思ったら、こんどはさらに大勢の人たちが入場待ちをしていました。大盛況で、なかなかじっくり見られないと聞いてはいましたが、8月2日から始まり開催後3か月近くも経っているのに「入場まで30分」の表示を見ながら、日本人はどうしてこんなにもフェルメールが好きなのかとなかばあきれてしまいます。8割は女性でしょうか。入場料65歳以上のシニア割引が900円のせいか、半数以上がシニアの切符を手にしているように見うけました。「30数点しかないというフェルメールの作品のうち、7点を一堂に見ることができる最後のチャンス」などと新聞やテレビで報道されたり、大宣伝におどらされているだけではなさそうです。

とはいえ、私もフェルメール好きな日本人の一人なのかもしれません。フェルメールの全作品を踏破したいと、17年かけて欧米の美術館を訪ね歩き「恋するフェルメール」を著した有吉玉青さんほどではないにしても、何種類かのフェルメール関連書籍や画集を手元にしているばかりでなく、すでにナショナルギャラリー(ロンドン)、ルーブル(パリ)、メトロポリタン(ニューヨーク)、絵画館(ドレスデン)で十数点のフェルメールと出あい、昨年は六本木の新国立美術館で開催された「牛乳を注ぐ女」には、2度も対面したほどです。

私が一番出合いたいと思っていたフェルメールは、ウィーン美術史美術館にある「絵画芸術」(画家のアトリエ)。今回来日する7点のうちの1点がこの絵であることを、主催する朝日新聞の6月27日付[be]「フェルメール展特集」で知り、12月14日までの会期中には必ず行こうと決意していました。

felmale.jpg

ところが、お目当てのこの作品がありません。一通り見終えたあと、特別の部屋にでも展示してあるのかと、もう一度もどってみましたが見当たらないため、フェルメール作品を1点ずつ数えていったところ、7点すべてあります。おそらく、何か事情があって来日できなくなったのでしょう。しかし、今回出品の7点はどれも、納得のいく作品ばかりで、特に「小路」と「ヴァージナルの前に座る若い女」の2点は、画集ではわからなかった詳細を見ることができて満足でした。

帰社後、「フェルメール展」のホームページ をチェックしたところ、開始間際の7月31日「オーストリア教育文化省は、輸送による影響、特に温湿度の変化に伴い、保存状態の悪化が懸念されるという事由により出品中止の決定を下した」とありました。

いずれ、ウィーン美術史美術館へでかけ「絵画芸術」だけでなく、ベラスケスの3点の「マルガリータ」(名品「ラス・メニーナス」に描かれている王女の、見合い写真としてハプスブルグ家に贈られた肖像画)、そしてブリューゲルの「バベルの塔」に出合いたいと願っています。何といっても美術鑑賞は、本来あるべき場所で、じっくり観るのに勝るものはありません。当然見られるものと訪ねた美術館に、「貸し出し中」で見られない時ほど興ざめなことはないからです。

なお、昨年12月6日の私のブログに「日本人の大好きな画家・フェルメール」と題し、フェルメールの人物像にふれていますので、参考にしていただければ幸いです。

投稿日:2008年10月31日(金) 09:15

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)