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みちがえる店舗と客の入り

つい10年ほど前まで「朝鮮焼肉」といえば、カルビやロース1人前の料金1000円前後と、一般庶民にとってはごちそうで、いつも口にできる手軽な食事ではありませんでした。ところが、数年前から、朝鮮焼肉の大衆化が一気に進み、数多くのファミレス風の焼肉チェーンがしのぎをけずって参入したため、カルビやロース1人前が450〜600円ほどで食べられるようになり、さらに、1人前80gほどだったのが、100g〜120gほどに増量する店も出てきました。

私がよくでかけるのは、井の頭通りに面したAという焼肉チェーンです。自宅から徒歩で15分ほどの距離なのと、お店の裏側は吉祥寺南町の高級住宅街。建ち並ぶ豪邸を品定めしながらの散歩は気分がよいものです。おまけに、お店は広々として、いつもお客はごくわずか。お客より店員の数のほうが多いのじゃないかと思うときもあるほどです。毎月、新聞折込にこの焼肉チェーンのクーポンが入っていて、そこには必ず生ビール100円、サワー類無料がついています。土日も含め午後の5時までランチがあって、ビールを飲んでも600〜800円で済ませられるなんて、経営は大丈夫かと心配になるほどでした。帰り際にはこれまた必ず次回用のクーポンをくれるのですから、もう常連になるほかありません。

心配なことがおこりました。9月はじめにこの店へ行くと、店内改装のためしばらく休業、9月末に名称を変えて再スタートと書かれてあるのです。おいおい、気前よくクーポンをくれたのは閉鎖のためか、でもチェーンだから他の店で使うことにするかとあきらめていました。

そして先週、Aのその後はどうなっているか気になり、久しぶりに出かけてみました。外観は以前とあまり変わったようには思えません。以前のチェーンの看板もそのままでしたが、その上に、高級焼肉「楽コンセプト」とあり、松坂牛、米沢牛、神戸牛を揃えているというのです。午後2時過ぎなのに、店内は満席に近いほどにぎわっていて、子どものはじけるような声にあふれています。店員の教育もいきとどいていて、背筋をのばして「いらっしゃいませ」というあいさつ、高級焼肉店で見かけるような服装までみちがえるほどで、こうも変わるものかとビックリを通り越して唖然としました。

メニューを見て、なぜ子どもが多いのか納得しました。KIDSセットというのがあって「やきにくセット」「エビピラフセット」「スパゲティセット」から「カレーセット」や「ハンバーグセット」まであります。一方、高級焼肉のほうは、松坂・米沢・神戸牛とも、カルビ1380円、上ロース1680円、上カルビ2300円、はねした2400円と、値段も高級です。コース料理もあって、「吉祥寺コース」は、松坂牛カルビ・リブカルビ・ハラミ・豚カルビ・季節の野菜焼・キムチ・ユッケ・サラダ・ごはん・アイスクリーム・コーヒーなどで、3500円。4800円の「プレミアムコース」もありました。

とにかく、お子様セットから、大衆焼肉、高級焼肉と、なんでもありという実験的なお店の今後を見守ってみたいと思っています。
なお、新しい店でもクーポンは使えましたよ、念のため。

投稿日:2007年10月24日(水) 09:47

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)