日本最大というだけあって、品揃えはさすがです。尾花さんという中年の女性担当者がついて案内してくれます。まず、数十点もあるソファをざっと見て周り、気になった数点にしぼりこみ、そして最終的に、黒革の品格あるソファーセットを購入しました。商品はまもなく会社に届いて、みんなからの評判もよく、満足しておりました。
1か月後、当日の担当者だった尾花さんから、次のような手紙をもらいました。
「この度は、お買い上げいただきまして誠にありがとうございました。
オフィスに置かれていかがでしたでしょうか。
お買い上げいただきましたソファーとアームチェアは、有名な芸術家であり、建築家でもあるル・コルビュジエのデザインによるものです。コルビュジエは、1887年スイスに生まれました。芸術家、建築家としてパリで活躍し、「家は住むための機械である」と主張したことはよく知られています。無駄をはぶいた機能的で幾何学的な建築を追求し、住宅に置かれる家具についても、建築空間を構成する重要な要素と考えました。
お買い上げの商品は、1928年にデザインされたもので、「グラン・コンフォール」(大いなる快適)という名前がついております。単純な構成で、最大の快適を形づくるル・コルビュジエの狙いがうかがえます。
まさに、オフィスびったりのデザインと機能だと確信しております。末永くご愛用いただければ幸いです。
また、何か探されるものがありましたら、ご来館くださいませ。お待ちしております。」
この手紙をもらって、大塚家具という会社の社員教育はさすがだなと感銘し、当社の営業マンも、こういう心構えであってほしいと、研修に使わせてもらってきました。数年たった今も私の手元にあります。
ところで、つい先日の新聞記事やテレビ報道をみてビックリしました。
「ル・コルビュジエの建築を世界遺産に推薦」という見出しがつき、日本では「国立西洋美術館」が唯一のコルビュジエ作品なのだそうで、フランス政府から文化庁や同館に話が持ちこまれたというものです。文化庁によると、仏政府はフランス、スイス、ドイツ、ベルギー、アルゼンチン、インド、日本の7か国計23件の作品について「ル・コルビュジエの都市建築作品」として世界遺産登録を目指している、7か国連盟でユネスコに推薦したい意向……、というものです。
そんな世界的に有名な人のデザインしたものだったとは、私の鑑識眼もまんざらではないとニンマリするとともに、誰もほめてくれないので、自分をほめてあげました。
なお、一昨日(18日)の読売新聞夕刊には、皇后さまが六本木の森美術館で開かれている「ル・コルビュジエ展 建築とアート、その創造の軌跡」を鑑賞されたと、カラー写真入りで紹介されています。