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子どもといっしょにお買物

こうすれば子どもはしっかり育つ「良い子の育てかた」 83

あるスーパーの店長さんから聞いた話です。

その店に、4歳くらいの男の子の手をひいた、30歳くらいのお母さんがやってくるようになって、もう半年以上になる。子どもを連れてくる母親の半分以上は、子どもが品物にさわろうとすると 「さわってはいけません!」 としかるようにいう。どうかすると、子どもの手をピシャリとたたく。

ところが、このお母さんには、そんなことが一度もない。ある時、男の子が魚にふれようとしたら、お母さんは 「あら、お約束はどうなったのかしら?」 と、静かにいうだけ。スーパーにいって、してよいことと、してはいけないことが、ちゃんと約束してあるらしい。

リンゴなど数のものを買うときは、お母さんが 「さぁ、5つ、かごに入れるわよ、お願いね」 というと、男の子は、お母さんが一つずつかごに入れるたびに 「ひとーつ」 「ふたーつ」 と声を出して数をかぞえる。そして、男の子が 「いつーつ」 というと、「はい、ありがとう」 と、ちょこっと頭を下げる。

店の中が混んでいないときは、そのかごを、お母さんが片手に下げて、男の子にも手をそえさせる。そして時々 「○○ちゃんが持ってくれるから助かるわ」 などといって、子どもに笑顔をおくる。

こうして買物を終えてレジに出る。するとお母さんは男の子に、きまって 「どうも、ありがとう」 という。そして、袋をいっしょに下げるようにして、子どもの歩調にあわせて、ゆっくり帰っていく。スーパーヘ来るとき、お母さんの姿は、たいてい、まっ白い前かけをしたまま。

店長さんは、この母子のたちいふるまい、帰っていくうしろ姿がとてもさわやかで、ふたりの来店がいつも楽しみだというのです。このお母さんの心には、ガミガミいい聞かせる 「しつけ」 などみじんもなく、子どもへのあたたかい思いやりだけが、いつもいっぱいになっているのにちがいありません。

投稿日:2008年07月09日(水) 09:07

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)