たまには子どもと添い寝をしながら、こんなお話を聞かせてあげましょう。 [おもしろ民話集 46]
むかしあるところに、とても可愛らしい少女がいました。ところが、お父さんもお母さんも亡くなり、お金もなく、家も、寝るベッドもなくなってしまいました。そしてとうとう、着ているものと、情け深い人にめぐんでもらったパンが一切れだけになってしまいました。(このパンは明日食べましょう。だって、今食べてしまったら、明日は何にもなくなってしまうもの) そう考えて、野原へ出ていきました。
すると、向こうから男の人がふらふらふ歩いてきました。「私は、もう何日も食べていません。何か食べものをめぐんでくれませんでしょうか」。心のやさしい少女は、大事に持っていた一切れのパンを、男の人にあげてしまいました。
やがて少女は、道端にしゃがみこんで泣いている男の子を見つけました。「寒くてこごえそうです。帽子をくれませんか」。かわいそうに思った少女は、かむっていた帽子を少年にあげました。
少しいくと、こんどは上着も着ないでふるえている子に出会いました。少女は (この子より私の方がましだわ) と、上着をあげてしまいました。
そのうち、森の近くへやってきました。あたりはもう暗くなりはじめています。そこへ裸の小さな男の子が出てきて、下着がほしいといいます。少女はこまってしまいました。でも、(もう暗いし、誰にも見られないわ。この子にあげよう) と、男の子に着せてあげたのです。
暗くて寒い真っ暗な森の中、少女は素っ裸で立っていました。すると、空がパッと明るくなり、星がパラパラと落ちてきたのです。でもよく見ると、それは星ではなく、金貨でした。そして、ふと気がつくと、少女はいつのまにか飛びきり上等の服を着て、はだしの足に真っ赤な靴と、頭には羽飾りのついた帽子をかむっていたのです。
心のやさしい少女に、神さまが奇跡をおこしてくれたのでしょうか。