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虎と干し柿

たまには子どもと添い寝をしながら、こんなお話を聞かせてあげましょう。 [おもしろ民話集 35]

ある山奥に一つの村があり、その村の裏山に大きな虎がすんでいました。雪がたくさんふってきたため、虎の食べものが何もなくなってしまいました。

ある冬の夜、虎は、食べものをもとめて、のそりと村のほうへ下りてきました。ある家に近づくと、中から子どもの泣き声が聞えます。いったい、何を怖がっているのだろうと、虎は窓の下にかがんでじっと耳をすませました。

「もう泣くのはおやめ。だまらないと、恐ろしい山猫がくるよ!」 と、母親がいいました。でも、泣きやみません。するとこんどは、「大蛇がくるよ!」 といいました。ところが、子どもは前よりもっと大きな声で泣いています。虎は、(何とまぁ強い子どもだろう、山猫も大蛇もこわがらないで泣いている) と、感心してしまいました。

その時、母親が 「もう泣くのはおやめ、虎が窓の下に来ているよ! 」 と、こわい声でいいます。虎は見つかったかとギクリとして、もっと身体を小さくつぼめました。でも、子どもはまだまだ泣き続けています。(この強いワシさえ怖がらないとは、いったいどんな子なんだろう) と、虎は少し不安になりました。

「さぁ、もう泣きやみなさい、干し柿ですよ」 という母親の声がすると、今度は、子どもが泣きやんだのです。

虎はもうビックリ。もう、家の中をのぞくどころではありません。(虎より強い干し柿というヤツは、ワシよりずっと強いに違いない) と、すり足、さし足、しのび足で、こっそり山へ逃げ帰りました。

投稿日:2008年02月27日(水) 09:21

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)