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電車を乗り越した母親

こうすれば子どもはしっかり育つ「良い子の育てかた」 72

以前、電車に乗っていた若い母親が次で降りるのに気づき、座席にあがって窓の外をみていたふたりの子どもを 「さあ、降りるのよ」 「早く靴をはきなさい」 「なにをぐずぐずしているの」 と叱りつけながら、子どもを引きずるようにして電車を降りていった話を、このブログに書いたことがあります。

ところが、先日、これとは全く逆の光景を目にして感銘しました。座席にあがって窓の外の風景を楽しんでいる3歳と5歳ぐらいの子ども。そして、社内の 「まもなく……」 というアナウンスで次の駅で降りることに気づいた母親。ここまでは、前の母親と同じです。ところが、その後のすばらしかったこと。

「今度降りるわよ、さあ、早く靴はいて」 といった母親が思い直し、次のように言ったのです。「ママがぼんやりしていて悪かったわ。あわてると危ないから、もうひとつ先の駅まで行って、戻ってきましょう。そうすれば、電車にもっとたくさん乗れるからうれしいでしょ。でも、少ししたら、靴をはいてね」

自分がぼんやりしていたのを棚にあげて、子どもたちを叱りつけた母親と、自分がぼんやりしていたことを子どもに詫びて、もうひとつ先の駅まで乗っていった母親。子どもへの対し方のあまりにも大きな違い、それが子どもたちの心へどのように影響を与えたかと思うと、母親の心のありようの大切さを痛感させられたという訳です。

投稿日:2008年02月25日(月) 09:32

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)