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「ありがとう」 は魔法の言葉

こうすれば子どもはしっかり育つ「良い子の育てかた」 71

作文教室の先生から伺った話です。

はじめて教室に来るようになった小学一年生の女の子が、わずか一時間のうちに5回も、「ありがとう」 をいいました。わからない字や文の続けかたを教えてやった時、「ありがとうございました」。横の同じ一年生の子に、机から落とした鉛筆を拾ってもらった時 「ありがとう」。学年が上の4年生の子が 「その字、ちょっと違うよ、ほら、こう書くんだよ」 と教えてくれた時 「ありがとうございました」。そして、一時間が終わって帰る時、「ありがとうございました」。──これが、まったく嫌味がないのです。

そこで、それから2、3回後の教室のとき、たまたま、その子と一緒に来られたお母さんに、たいへん感心したことを話しました。すると、そのお母さんから返ってきた言葉は次のようなことでした。

「私は、祖母から くありがとう> という言葉のすばらしさを教わり、家のなかで夫に対して、何かあれば自然に <ありがとう> というのが習慣になってしまいました。これを夫に強要した事は一度もありませんが、それでも、いつの間にか くありがとう> をよく口にするようになりました。そして、あの子が生まれ、2歳、3歳になった頃から、あの子がちょっとでも何かしてくれれば <ありがとう> と言っているうちに、あの子も、いつの間にやら <ありがとう> と言うようになりました。だだ、それだけのことです」

この話を聞いた後、思わず胸のうちで (ありがとうございました) と言ってしまったほどでした。話の最後に 「ありがとうってすばらしい言葉だと思います」 と言われた時の、このお母さんのお顔がほんとうにきれいでした。

こう語る、作文の先生の笑顔もまた印象的でした。

投稿日:2008年02月18日(月) 09:37

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)