先ごろ、経済協力開発機構(OECD) の加盟国日本を含む57の国と地域でおこなわれた2006年の「科学的応用力」「数学応用力」「読解力」調査結果が発表され、第1回の2000年ではトップクラスだったのが、第2回2003年、そして2006年と毎回低下していることや、「科学について学ぶことに興味がある」「理科の勉強は役立つ」という問いに対する回答では最低レベルという報告に、教育界は大きなショックを受けているようです。
もともと、子どもたちは科学好きです。3歳前後になると、「あれなあに?」「これなあに?」「なにしてるの?」と次々に疑問をなげかけてきます。もう少し知恵がついてくると、身のまわりのすべてに好奇心をもつようになり、大人たちは、ふだんまったくあたりまえと思っているようなことに対する素朴な質問の数々に、とまどってしまうこともしばしばです。でもこの時代では、説明しにくいことを何とか説明するだけで、子どもは満足している例が多いでしょう。
やがて、4、5歳くらいになると、「なぜなの?」「どうしてなの?」「それから?」というように、ものごとの原因や結果、人の行動の理由など、観察力も鋭く具体的になってきます。このころの疑問こそが、考えること、科学することの芽生えでもあります。子どもの伸びようとする知能の芽を伸ばすのも、摘みとってしまうのも、回答のしかたいかんにかかっているといっても過言ではありません。
子どもの質問は、知能がぐんぐん発達して、ものごとに強い興味をひかれている証拠なので、忙しいときでも、時間を作り、ていねいに、じょうずに答えてあげるようにしたいものです。
「考えること」の過程をよくみると、まず関心にはじまり、興味深く見つめ、深く知ろうという欲求にかわり、追究するという順をたどっています。こんな日常のちょっとした子どもの行為の中にも、「関心→興味→疑問→実験→結果」という、5段階の過程をたどる科学の基本的な姿勢があらわれています。さらに科学は、実験によって法則を知り、法則にしたがって次の考えを展開する過程をたどりながら進歩してきた学問です。
ところが、最近の傾向で疑問に思うのは、5段階の最終である答え(結果)を安直に教えてしまう傾向にある点です。ほんとうの科学は、結果を生み出す過程をたどることにあるのではないでしょうか。これを怠っていては、「科学的応用力」は、ますます低下するに違いありません。
小さな男の子がミミズを指でつまんで、「ミミズって何を食べてるの?」と、お母さんに質問しています。「まあ、きたない。早く捨てちゃいなさい」「お母さんがそんな虫がきらいなのよく知ってるでしょ」 と、ヒステリックにいうお母さん。
いっぽう、子どもといっしょにミミズを観察しながら、「土を食べて土をウンチにしているのよ。土の中にある枯れ葉とか、ちっちゃな虫や、動物のたまごが栄養になっているの。ミミズがそうやって土をたがやしてくれるおかげで、野菜や作もつがよく育つから、お百姓さんはミミズがいると喜ぶそうよ」「中国では、ミミズを乾燥させて、ぜんそくの薬にしているんだって。とても人間に役立つ生きものだから、だいじにしましょうね」というお母さん。
子どもの将来に与える影響は、どんなに大きな差になってあらわれるか計りしれません。ぜひ、後者のような母親をめざしてもらいたいものです。
そこでこれから週に1回程度、「おもしろ科学質問箱」というコーナーを設け、子どもがよく質問してくる疑問に対する回答例を掲げてみることにします。