こうすれば子どもはしっかり育つ「良い子の育てかた」 61
これは、ボランティアで子どもたちに「作文」を教えている先生から聞いた話です。
ある日、陽子ちゃんという1年生の女の子が、新しく作文教室に入ってきました。20人ほどの集団にぽつんとひとり加わったのですから、少し不安な様子でした。「今までに作文を書いたことある?」 「書き方わかる?」 などと聞いても、返事をしません。
そこで、作文教室に入ってすでに4か月になる五美ちゃんという2年生の女の子の横に座らせて、「五美ちゃん、陽子ちゃんに教えてあげてね。五美ちゃんなら、教えてあげられるでしょう」 と頼みました。
やがて、五美ちゃんは、自分の作文を書くのも忘れるようにして、陽子ちゃんに教えます。「どんなことを書いてもいいの。陽子ちゃんの思ったとおりに書いたらいいのよ。題は、ここのところ、名前は、ここに書くのよ」 と一所懸命でした。そして、1時間後、2人は作文を提出して仲よく帰って行きました。
次の日、五美ちゃんのお母さんから電話がきました。「五美は、1年生のお嬢さんに作文を教えてあげてねと言われたことが、とってもうれしかったらしくて、家に帰ってきて家族みんなに話していました。母親の私は、これまで“だめじゃないの”と叱ることは多くても、五美の心が気持ちよくなるような言葉をあまりかけていなかったことに気がつきました。五美は、もう今から次の作文教室の日が早くこないかなあと言っています」
五美ちゃんは、自分が認められたことがたまらなくうれしかったようです。その日 「お父さんのこと」 という題で書いた作文を見せてもらいました。「うちのお父さんは、お母さんにはいばっているのになきむしです。テレビを見ていても、すぐなきます……」 という、とても素直な内容でした。