こうすれば子どもはしっかり育つ「良い子の育てかた」 54
午後になって 「やっぱり雨が降りだした」 日のこと。道で会った顔見知りのお母さんが 「朝子どもに、きょうはかさを持って行くように言ったのに持って行かなかったものですから……。子どもがかさを持ってきてくれるように電話をかけてきたんです」 と言い残して、わが子のかさを手に雨のなかを急ぎ足で学校へ……。その母親のうしろ姿を見送りながら、ふと、考えたことがありました。
それは、こんな時、学校へとんで行ってやるのが果して最善の策だろうか、ということです。雨は、道端に落ちた枯葉を強くたたくほどひどいものではありません。それに、学校から家までは子どもの足でかければ10分ほどの距離です。
「うちの子だけ雨にぬれたらかわいそう」 という気持はわかります。しかし、ときには 「かさを持ってるお友だちに入れてもらいなさい」 「かけて帰っておいで」 くらいの突き放した導き方が必要なのではないでしょうか。
「言うことを聞かないでかさを持っていかなかったバチよ」 などというのではなく、子ども自身でものごとを解決していくチャンスを与えるのです。子どもの要求に母親が応えることはかんたんです。しかし、度が過ぎると、知らず知らずのうちに、わが子を依頼心の強い甘えん坊にしてしまいます。
しつけには、時には、母親が出したい手を引っこめることも、出したい口を閉じることも大切なのではないでしょうか。「わが子がかわいそう」 と思うことだけが親の愛情ではないことを、わきまえておきたいものです。