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ラファエロ 「アテネの学堂」

私の好きな名画・気になる名画 3

この絵はローマの 「バチカン美術館」 にあります。600年以上の歳月をかけ、質、量ともに世界最大の美術品に埋めつくされ、24の美術館とミケランジェロの天井画で名高いシスチナの礼拝堂からなる美術館の総称が 「バチカン美術館」 です。部屋の数1400、美術館というより 「バチカン宮殿」 といったほうがふさわしいかもしれません。「アテネの学堂」 は、この宮殿の3つの大きな部屋のひとつ 「署名の間」 という、法王が公式の署名や捺印する重要な部屋の壁面に、横幅だけで7m70cmの堂々たるフレスコ画で描かれています。

Raffael_058.jpg

壮大なホールに一堂に会した、古代ギリシアの哲学者や科学者たちおよそ50人。中央にいるのは、はげ頭白ひげのプラトンと、黒髪黒ひげのアリストテレスです。そのむかって左側に数人の相手に講義している黄緑色の服で横向きの老人がソクラテス。左下手前にしゃがんで何か書き物をしているのがピタゴラス、その右の石机に頬杖をついているのがヘラクレイトス、右前方でコンパスを片手にかがんでいるのがユークリッドです。画面の右隅に顔を見せている二人のうち奥がラファエロ自身の自画像で、プラトンのモデルはレオナルド・ダ・ビンチ、ヘラクレイトスのモデルはミケランジェロだといわれています。これらの人々は年代も違いアテネの人だけではありませんが、まとめて描いたのは、当時の古典尊重の風潮にそったものだったのでしょう。

ラファエロというと、聖母マリアの画家として、どちらかといえば女性的なイメージを持たれがちですが、「アテネの学堂」 と同規模の壁画を数点描いており、それが弱冠27、28歳ころの作品だと聞くと、その底知れぬ力量に感服してしまいます。

先に記しましたように、私は 「バチカン美術館」 を3度訪れています。でも、1987年、1998年の時は、この絵に出会えませんでした。ツァーの1時間30分程度の見学時間ですと、あまりにも見るものが多いために、この絵にまで到達できないのが実情だからです。そこで、妻と訪れた2001年の時は、ナポリとポンペイ行をキャンセルし、バチカン美術館の見学に1日さきました。今日は、妻の命日です。早くも丸3年がすぎました。
「お母さん、バチカンはよかったよね」 「ほんとにあの日は思い出深いわ。『アテネの学堂』 もよかったけど、宮殿の一番奥の絵画館で、ラファエロの 『キリストの変容』と いうキリストが空を飛んでいる大きな絵を、誰もいない部屋でソファに座ってゆっくり鑑賞できたのも素晴らしかった……」 という声が聞こえてくるようです。

投稿日:2007年09月05日(水) 09:26

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)