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手伝いの中から、思いやりも育つ

こうすれば子どもはしっかり育つ「良い子の育てかた」 53

これは、ある幼稚園の先生から聞いた話です。

父母会の席で、宏美ちゃんという4歳の女の子が、とてもよく気がつき、思いやりがあり、いつも大きな声で 「ありがとう」 と言うので、先生は、その母親に家でのしつけをたずねたそうです。すると、30歳くらいの母親が 「とくに、きびしいしつけなどしていません」 と前置きして、次のように答えてくれたそうです。

「家では、可能なかぎり、どんなことでも手伝わせます。少し無理かなと思うようなことでも、それから、ほんとうは手助けにはならないとわかっていても、手伝わせます。廊下のぞうきんがけでも、ぞうきんをしぼることも廊下をふくことも、全部、わたしといっしょにやらせます。そして、ときどき、半分はわざと、お母さんはほかの仕事で疲れたから宏美ちゃん、やってくれないかなあ、などとたのみます。そして、どんな小さなことでも何かをしてくれたときは、私が、はっきり、宏美ちゃんありがとうと言います。また、おかげで助かったわとお礼を言います。ただ、これだけのことですが、いつのまにか、思いやりのようなことや、ありがとうとはっきり言うことなどを身につけてくれたようです」

とくにしつけはしていないと言われながらも、これ以上のしつけはないのではないでしょうか。「子どもが失敗したときは?」 という問いには、「手伝いの失敗は、どうして失敗したのかなあと言葉をかけて少し考えさせるだけで、とがめません。皿を割ろうが、じゅうたんに水をこぼそうが、これで宏美が何かを学んでいくことに比べれば、なんでもないことです」 と、答えていました。

口先だけで教えたり導いたりするのではなく、母親と子どもが心を溶けあわせたなかで、子ども自身に自分で学ばせていく──この日の父母会は、多くのお母さんがこの母親に学んだようです。

投稿日:2007年09月26日(水) 09:08

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)