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電車の中の生きたしつけ

こうすれば子どもはしっかり育つ「良い子の育てかた」 48

ある私鉄の始発電車に乗りこんだときのことです。
ホームに並んでいる人の列の中に母親と男の子がいました。電車のドアが開くと、その子どもが列を乱して前の方へ行き、横から割りこむようにして車内へとびこみ、席をとりました。そして、あとから乗りこんできた母親に 「お母さん、お母さん」 と呼びかけました。
お母さんのために席を確保してやったのです。母親がそばへくると 「はい、お母さんすわって」 といわんばかりに自分は立ちました。
ところが母親は、自分は腰かけないで、横に立っていた女の人に 「どうぞ、おかけになってください」 とすすめました。

そして、けげんな顔をしている子どもにはっきり言いました。
「あなたは、順番をみだして乗りこんで席をとったでしょ。してはいけないことをしたのよ。だから、お母さんは、そこにすわってはいけないの。わかるでしょ」 それは、けっして叱りつけるような荒い口調ではなく、ふつうに話しかけるような静かなものでした。男の子は小さな声で 「ハイ」 と、返事をすると、女の人がかけやすいように席の前をあけました。やがて、母親の 「さあ、どうぞ」 という声に女の人が腰かけて、電車は走りだしました。

母親は、自分のために席をとってくれた子どものやさしさは十分にわかっていたはずです。しかし、いけないことは、いけないこととして、きっぱり戒めました。しかも、まわりに人がいることもかまわずに、その場で。おそらく男の子は、もう二度とあのようなことはしないでしょう。しばらくしてその親子を見ると、母親の片手が男の子の肩に軽くのっていたのがとても印象的でした。

[夏季休暇のおしらせ]   8月13日より16日まで、夏季休暇のため、ブロクを休ませていただきます。 

投稿日:2007年08月10日(金) 09:06

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)