こうすれば子どもはしっかり育つ「良い子の育てかた」 44
「私が小学生のときのことです。家に自分の勉強部屋を持っている子がうらやましくて、母に、私も自分の勉強部屋が欲しいとねだったことがありました。家族全体で6畳ひと間のくらしをしているのに、そんなものを望めるはずもありません。ところが、母は〈そうかい、わかったよ〉と答え、つぎの日、私が学校からもどってくると 〈はい、ここが、おまえの勉強部屋だよ〉と言ってくれました。
押し入れの半分を片付けて、そこに小さな机と小さな電気スタンドを持ちこみ、ふすまに『マリコのへや』 と書いた紙を貼ってくれたのです。私はうれしくて、ずっと、そこで勉強するようになりました。
クリスマスツリーをねだったときは、たんすのひきだしを上から順に少しずつ大きく開け、そこにひもを引っぱって紙を細く切ったものを飾りつけてくれました。ぴかぴかする電気がないといやだとすねると、そのときだけは、ぴかぴか光っていると心のなかで思えばいいじゃないか、なんでも人と同じように欲しがるものでないと、しかられました」
これは、ある女優さんが語っていた母の思い出です。
この女優のお母さんは、子どもがむりなことをねだっても、けっして 「ばかなことを言うものではない」 などと叱ることはなく、この勉強部屋とクリスマスツリーのように、いつもやさしく夢をかなえてくれたというのです。
お金の力で解決してやるのではなく、また、お金がないから解決してやらないのでもなく、子どもの望みや言い分にはあたたかく耳をかたむけ、母親のぬくもりをもって創造的にこたえてやる。これは、至上のしつけです。しつけの基本は、子どもをおさえつけることにあるのではなく、子どもをのばすことにあるのですから。