こうすれば子どもはしっかり育つ「良い子の育てかた」 43
バスの中で目にした光景です。
つぎの停留所で降りるのを、ついうっかりしていたのでしょう。停留所を目前にして、3、4歳くらいの子どもをつれた母親が、荷物を片手にあわてだしました。
くつをぬいで座席にあがり窓にしがみついていた子に 「さあ、降りるのよ。早く、くつをはきなさい」。
子どもはあわててくつをはこうとするのですが、なかなかはけません。すると母親は 「なに、ぐずぐずしてるのよ」。子どもはいよいよはけません。「なに、やってるの」 「このくつ、小さいんだもん」 「ぐずぐずいわないで早くしなさい」。
やがてバスがとまりました。母親は 「ほんとに、しかたないわね」 と言いながら、くつをはきかけのままの子の手をとり、ひきずるようにしてバスを降りていきました。
発車したバスの中からふりかえると、その子はバス停に立ったまま、目に手をあてて泣きだしていました。
自分のあせりを子どもにおしつけた母親。子どもは母親といっしょにいる安心感もあってやすらかな気持でバスを楽しんでいたのでしょう。子どもにとって、こんなめいわくな話はありません。
ところが、実は、これに似たことが案外に多いのではないでしょうか。子どもの人格などというものは、どこかへ置き去りにして、力づくで子どもを従わせようとする。これは、しつけなどといえるものではありません。
「なにをぐずぐずしているの」 と子どもに口走ってしまうまえに、ちょっと間をおいて考えてみることを心がけたいものです。