たまには子どもと添い寝をしながら、こんなお話を聞かせてあげましょう。 [おもしろ民話集 1]
ある町に、ハンスという名前の男と、そのお嫁さんがいました。
ふたりはそれほど貧乏ではありませんでしたが、ハンスもお嫁さんも、すこしばかり欲張りでした。
「町長さんのように、広い土地とりっぱな家に住みたいな」
「私は、世界で一番りっぱな宝石がほしい。それに、お姫様のように美しくなりたい」
ハンスとお嫁さんは、いつもこんな大きなことを望んでいました。
ある晩のことです。ふたりが、いつものように大きな望みを話しあっていると、ランプがすっーと消えて、赤い光に包まれた一人の女の小人が家の中に入ってきて、鈴虫のようなきれいな声でいいました。
「私は、山奥の水晶御殿に住んでいる魔女のお使いです。あなたたちの願いを3つだけかなえてあげましょう。今日から1週間のあいだに、願いをいいなさい」
小人はこういうとぱっと姿が消え、ランプがひとりでに燃え出し、また家の中が明るくなりました。
ハンスは、にこにこしていいました。
「世界で一番大きな望みを3つお願いしよう」
お嫁さんも、にこにこしていいました。
「1週間も暇があるのですから、ゆっくり考えてお願いすることにしましょう」
ところが、次の日の晩のこと。
ジャガイモをお皿に盛っていたお嫁さんがいいました。
「ジャガイモに、ソーセージをそえたらおいしそうだわ」
すると、とたんに家の中がピカッと明るくなり、1本のソーセージが、ジャガイモの上にのっていました。お嫁さんは、ついうっかり、1番目のお願いを言ってしまったのです。
ハンスはこれを見ると、すっかり腹を立てて、
「なんてバカなことを言ってしまったんだ。お前の鼻に、ソーセージをくっつけてやる」
すると、またピカッと光ったかと思うと、ソーセージがお嫁さんの鼻にくっついてしまいました。こんどは、ハンスが2番目のお願いをしてしまったのです。
ソーセージは、どんなにひっぱってもとれません。そこでハンスはしかたなく、
「小人さん、お願いです。鼻にくっついたソーセージを取ってやってください」
すると、家の中がまたピカッと光り、お嫁さんの鼻についていたソーセージがぽとりと落ちました。
ふたりは、顔を見合わせ、うれしいような、悲しいような顔になりました。
大きいお願いをしようと思ったのに、得をしたのはソーセージ1本だけでした。
小人はもうそれっきり、二度と現われませんでした。