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ワールド図書館(29) 「南アメリカ」 巻末解説

前回(6/7号)に続き、25年ほど前に初版を刊行した「子どもワールド図書館」(38巻) 第29巻「南アメリカ」 の巻末解説と一部補足事項を記します。

「南アメリカ」 について

[ブラジル] ブラジルは1500年、ポルトガル人によって発見されました。一般に南アメリカの国々の歴史というと、先住者インディオによる何万年もの暮しがあったわけですが、明らかなのは大航海時代に発見されてからの400〜500年です。その後320年間、ブラジルを植民地にしたポルトガル人は、インディオだけでなく、アフリカから黒人どれいを買って、労働力にしました。1889年に連邦共和国となったブラジルは、どれい制を廃止しましたが、かわりに広大な土地に必要な人口増加を、世界各地からの移民にたよってきました。面積は日本の23倍、人口は日本に近く、1億人を超えるにいたりました。気候・風土や人種はさまざまで、ブラジルには、たくさんのブラジルがあると語られる多様性を持っています。*[2005年現在人口1億8640万人、世界第5位]
いま、豊富な地下資源の開発を急ピッチで進めていて、南アメリカの工業先進国への道を歩んでいます。若々しい力のある「明日の大国」 として注目されている国です。
*現在、ロシア、インド、中国と並んで「BRICs」(ブリックス) とよばれる新興経済国群の一角にあげられています。

[パラグアイ] 内陸にあり、日本よりやや広いところに人口はわずか*[340万]、土地だけは豊富という国です。*[2004年現在620万人]
好戦的で、近隣3国を相手に敗れた三国戦争、傷み分けに終わったボリビアとのチャコ戦争などがあり、その結果、国は疲れ、万事にだいぶ遅れをみせています。国土は、大きく分けるとパラグアイ川を境に、肥えたテラ・ロッサの森林地帯とパンパです。いまは貧しくてもこの豊かな土地は、これからの発展を約束する力を持っています。すでにそのきざしが見えている国です。

[ウルグアイ] 面積が日本の半分、人口300万という小国ですが、世界で最もてっていした福祉国家であることは案外知られていません。大統領制まで廃止してしまった「民主主義の実験室」 とよばれるユニークな国です。牧畜業がさかんで、生産と輸出はすばらしく、国民の生活水準は南アメリカ一といわれています。美しい避暑地にも恵まれ、南米各地からも観光客が集まってきますが、カジノも国営という国です。

[アルゼンチン] 政治や経済が不安定な*[軍事政権の国]というのが近ごろのアルゼンチンのイメージです。ところが国民の表情は明るく、生活は落ち着いているといいます。理由のひとつに食料のたっぷりある国だということがあげられます。インフレといっても食料は安く、ゆったりした住居があり、加えて男女とも身だしなみのよいお国柄です。「衣食足りて……」ということでしょうか。*[1983年軍政から民政に変わりました]
この豊かさをもたらしたのは、アルゼンチンの心臓部パンパです。しかしパンパの歴史はそう古いものではありません。1856年にヨーロッパ移民の入植村が建設され、ブエノスアイレス港までの鉄道が敷かれてから100年あまりで、急激に発展したのです。いまパンパでの生産品は輸出高の90%をしめています。交通立地の上からも工業政策の重点地であるこのパンパにアルゼンチンの経済活動のほとんどが集められています。
アルゼンチンは南北にながい地形のため、気候・自然も多様な地域性を見せています。ことに国土の30%にあたるパタゴニア地方は、天然ガス・石油が産出するところから大いに期待されています。
教育水準も高く、おおらかな国民性、豊かな大地と資源を併せもったアルゼンチンは、南アメリカの大国です。

[チリ] チリは南北の長さが4200kmもありながら、東西は100〜200kmしかないというおそろしく細長い国です。熱帯の砂漠から寒帯の氷河まであり、それにともない産業の発達もいろいろです。山国らしく資源も豊富にあるところから、国民の生活も豊かです。チリ硝石にかわって世界的な銅産国ですが、ありがたくないのが世界一の地震国という名まえです。アルゼンチン、ブラジルとともに、有力なABC3国のひとつに数えられています。

投稿日:2007年06月12日(火) 09:25

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)