児童英語・図書出版社 創業者のこだわりブログ Top >  子どもワールド図書館 >  ワールド図書館(26)「アメリカ(2)」巻末解説

ワールド図書館(26)「アメリカ(2)」巻末解説

前日(5/30号)に続き、25年ほど前に初版を刊行した「子どもワールド図書館」(38巻) 第26巻「アメリカ(2)」 の巻末解説と、その後の変化を記した補足事項を記します。

「アメリカ (2)」 について

アメリカ合衆国は、本土の48州とアラスカ、ハワイの2州を加えた50州、それに首都地区 (コロンビア区) とプエルト・リコ、バージン諸島、グアム島などの海外領土から成る連邦共和国です。およそ936万平方キロメートルの国土に、*約2億3000万人の人びとが暮らしています。
*2006年10月、人口3億人を突破しました。

広大な国土と豊かな資源に恵まれているうえ、すぐれた科学技術をもつアメリカは、なんでも「世界一」が好きな国です。世界一の立体ハイウェー、世界一の屋内競技場、世界一の遊園地、世界一の超高層ビル……と、超大国を誇る世界一が、数かぎりなくあります。暮らしやすさも、世界一だといわれます。事実、世界の工業生産の60%近くを占めるアメリカは、資本主義の国ぐにの、豊かさのモデルになっています。とくに、第2次世界大戦後、アメリカの占領下に置かれた日本は、政治、経済、文化、教育のあらゆる面で、大きな影響を受け、生活様式が、がらりと変わりました。GI刈りや警察官のパトロール制度、セルフサービスシステム、ファッション、都市計画にいたるまで、戦後の日本には、アメリカの流行がいち早く伝えられ、よくも悪くも「いま、アメリカでは」を追いかけることによって、経済成長を続けてきました。テレビ、電気冷蔵庫、電気洗たく機、電気掃除機をはじめ、電機製品のめざましい普及も、生活の合理性を追求する、アメリカをみならってきたといえるでしょう。

しかし、その強大で恵まれたアメリカも、つぶさに見ると、数多くの問題をかかえています。その第1は、富める超大国であるはずのアメリカが、じつは世界でもっとも貧富の差が大きい国だということです。大都市のスラム街には、その日の生活に困る人たちが、たくさん住んでいますが、社会福祉の拡大には、国民のあいだに根強い反発があって、なかなか救済できずにいます。それは、金持ちは努力した結果であり、貧乏人は怠けて成功しなかった結果だという、アメリカ人の価値感に根ざしているといわれます。こうした価値感が、人の才能や勤勉さを、収入の多い少ないで判断する「金銭万能」の風潮を生みだしています。アメリカで、プロスポーツが盛んなのも、スター選手が英雄的なあつかいを受けるのも、才能イコール収入という価値感を端的に物語っているといえるでしょう。また、世界の指導国である自信に満ちたアメリカが、理想としてのデモクラシーを、世界じゅうに強制輸出しようとしたことも、アメリカの社会構造に、暗い影を落としました。

アメリカは、世界全体をアメリカ化する手段として、経済援助を惜しみませんでしたが、同時に軍事援助も半強制的におこなってきたのです。2000におよぶ軍事施設を海外へもち、60か国でCIA (中央情報局) に秘密活動をさせてきました。この力による平和達成が、アメリカをベトナム戦争へ介入させました。しかし、得るもののない、みじめな結果だけを残しました。アメリカの大学生の50%が、マリファナの経験者といわれるようになったのも、ヒッピーの出現も、若者たちが、ベトナム戦争で自国の進路に自信を失ったのと、技術文明に支えられた、没個性的社会への、反発のあらわれだといわれています。ケネディ大統領 (第35代) の暗殺を境に、アメリカは 「病める超大国」 といわれるようになりましたが、まだ、一般的には健康なエネルギーが存在しています。国民のあいだで、建国の原点へもどって、再出発しようという気運が急速に高まっていることが、それを如実に示しています。アメリカの若者たちは、きっと、21世紀の理想の社会づくりをめざしてがんばっていくでしょう。

補足事項
1991年のソ連の崩壊により、米ソ2大国による冷戦が終わり、アメリカは世界でただひとつの超大国になりました。その結果、「世界の警察」を自認するようになり、米軍を中心とした多国籍軍がイラクに大規模な航空攻撃を加えて始まった湾岸戦争など、各国の紛争や戦争に積極的に派兵しています。特に中東地区の紛争では、明らかにイスラエルに味方する戦術により、イスラム諸国から大きな反発をかってきました。
2001年9月11日、イスラム過激派による同時多発テロ事件がおきました。ハイジャックされた4機のジェット機が、ニューヨークのシンボルともいえる世界貿易センタービル(ツインタワー)やペンタゴン(アメリカ国防総省)などに意図的に激突し、約3000人もの犠牲者をだしました。過去の戦争において、アメリカ本土に攻撃を受けたことのない政府のショックは大きく、報復のためにアフガニスタンに侵攻したり、「テロ支援国家」としてイラク、イラン、北朝鮮を名指しで非難、2003年には大量破壊兵器を保有しているとしてアメリカ主導によるイラク戦争をおこしました。この戦争は、国連決議に反する強引な行為であったため、世界中で反米感情の高まりを引き起こしました。戦争は勝利宣言したものの、イラク国内は内戦状態・無政府状態にあり、アメリカ兵の死者が2006年10月までに2500人を超えたといわれ、アメリカ国内で政府非難の声が急速にあがりはじめました。

投稿日:2007年05月31日(木) 08:54

 <  前の記事 ワールド図書館(25)「アメリカ(1)」巻末解説  |  トップページ  |  次の記事 だれにでもある「がん細胞」  > 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://mt.izumishobo.co.jp/mt-tb.cgi/866

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

         

2014年08月

          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

月別アーカイブ

 

Mobile

児童英語・図書出版社 社長のこだわりプログmobile ver. http://mt.izumishobo.co.jp/plugins/Mobile/mtm.cgi?b=6

プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)