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ワールド図書館(27)「メキシコ」巻末解説

前回(6/1号)に続き、25年ほど前に初版を刊行した「子どもワールド図書館」(38巻) 第27巻「メキシコ」 の巻末解説と、その後の変化を記した補足事項を記します。

 「メキシコ」 について

「高原と太陽と花と砂ばくの国」 メキシコは、国土が日本の5倍半、人口は*[約1/2]です。国土の大部分が海抜1500m以上の高原にあり、高度によって気候にちがいがみられます。
*2005年現在の人口1億700万人ですから、日本の約4/5です。

メキシコはほとんど熱帯に位置するのですが、海岸部や低地では熱帯性気候、高地になるにしたがって、亜熱帯から温帯へと変化していくのです。都市の多くは、すごしやすい高地にひらけていて、首都メキシコシティも海抜2259mという高地にあります。そのため、ひざしは強くても気温の変化は少なく、1年中、春のような温暖な気候にめぐまれています。北部高原は、雨の少ないサボテンだらけの半砂漠地帯です。低地や海岸部には、熱帯地域のために、人の住めないところもあるくらいです。

メキシコは、スペイン人の侵入以来長い間スペインの植民地支配の下にありました。古代のころのメキシコは、すばらしい文明をもったインディオが国をつくり、大変栄えていましたが、1521年インディオ最後のアステカ王国が、コルテスの率いるスペイン軍に攻め落とされてから 300年間、人々はスペインの圧政と搾取に苦しんできたのです。銀を中心とする豊富な資源供給国にされ、過酷な税金が課せられました。「独立の父」 イダルゴを先頭にインディオ大衆がたちあがったのは、1810年のことです。この革命は失敗におわりましたが、1821年、ついにメキシコはスペインから独立をかち得たのです。苛酷な使役や迫害の中で、原住民インディオの数は減少し、いまだに最下層の生活に留めおかれています。6千数百万人のメキシコ人のうち、生粋のインディオは約300万人といわれ、大半がメスティソ (スペイン人とインディオの混血) です。スペインの影響は、生活と文化の中に流れていて、公用語はスペイン語、宗教も国民の大多数が熱心なカトリック信者です。建築もスペイン様式が数多く残り、闘牛はもちろんのこと、歌や踊りもスペイン風です。

ところで、現在のメキシコは、国民の半数以上が農民です。綿花、コーヒー、サイザル麻などは重要な輸出品です。銀をはじめとする鉱産資源も豊かで、世界有数の鉱産国です。最近、石油の大規模な埋蔵量が確認され、サウジアラビアにつぐ石油国になるだろうといわれています。メキシコは、長いスペインの支配下にあって、工業の発展がほとんどありませんでしたが、第2次世界大戦を境に、近代的な農工業国家へ変りつつあります。石油化学工業、繊維、食品加工の製造工業、自動車工業などが盛んになっています。しかし、工業資本の大部分は、アメリカを中心とする外国資本でした。したがって、一部の上流メキシコ人を除いて、国民全体の生活水準は低く、生活もあまり楽ではありません。貿易は、対アメリカが大部分で、アメリカに対する経済依存はきわめて強いものがあります。近年は、メキシコ独自の資本投入がふえて、外国資本をしめだす傾向にあります。1938年には、アメリカの石油資本をしめ出して、石油の国有化に成功しました。メキシコは、メキシコ人の手による国づくりを積極的におしすすめています。教育にも非常に力を入れて若い力を育て、インディオ文化をとり入れ生かしながら、着実に前進しているのです。

*補足事項
1994年、アメリカ、カナダ、メキシコ3国による北米自由貿易協定(NAFTA)をむすんだことにより、メキシコは安価な労働力を生かしてアメリカ、カナダ向けに家電製品などの輸出を活発に行なっています。ただし、アメリカへの依存度が高すぎるため、他国との経済提携を進め、2004年には日本と関税の廃止または低減を含む経済提携協定をむすび、貿易量を増やしています。

投稿日:2007年06月05日(火) 09:30

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)