こうすれば子どもはしっかり育つ「良い子の育てかた」 36
「ちゃんとしつけたはずなのに」 「しつけだけはきびしくしたつもりなのに」……わが子が思いがけないことをしでかしてしまった親の口から、よくこんな言葉を聞かされます。
しかし、よく聞いてみると、しつけのはきちがえが少なくないようです。
しつけという言葉は 「着物を縫うとき縫い目がくるわないように、仮に、糸であらく縫っておく」 という 「しつけ」 から生まれたものとされています。このことからも明らかなように、しつけは、子どもを、がんじがらめにしてしまうものではありません。ところが 「きびしく、しつけたつもりなのに」 というしつけ方には、がんじがらめのにおいがします。
また、着物を縫うときのしつけ糸は、必ずあとで、きれいにとってしまうものなのに、そのことが忘れられてしまっているように思われます。
たしかにしつけとは、ちゃんとしたことを身につけさせるために、子どもにしつけ糸をほどこしていくものです。しかし、そのしつけ糸は、とってしまうものだということ、もっとうがった言い方をすれば、しつけ糸を早くとってしまうために、しつけていくのだ、ということを忘れてはなりません。
しかも、はじめのしつけ糸は親がつけてやったとしても、そのしつけ糸をとる作業は、子ども自身に、子ども自身の力と判断でやらせたいものです。
ところが 「きびしくしたつもり」 の親を見ると、この、しつけ糸を子ども自身にとらせることを忘れてしまっています。しつけられる子どもは人格のある人間であるということを肝に銘じておくことが、何よりも大切でしょう。