児童英語・図書出版社 創業者のこだわりブログ Top >  おもしろ民話集 >  1本足のにわとり

1本足のにわとり

たまには子どもと添い寝をしながら、こんなお話を聞かせてあげましょう。 [おもしろ民話集 2]

むかし、あるところに神父さんと、年とった黒人の召使いがいました。
召使いは、神父さんが子どもの頃から家にいたので、大人になってもまだ子ども扱いをしていました。神父さんが少しでも雨にぬれて帰ってくると「あれあれ、カゼをひくじゃありませんか」とおおさわぎしたり、死にかかっている人をなぐさめに夜遅くでかけようとすると「身体をこわします。朝まで待てないのですか」とぶつぶつ言ったりします。
でも、神父さんは、何をいわれても気にしません。心配してくれる召使いがかわいくてしかたがなかったからです。

ある日のこと。神父さんはニワトリの丸焼きをこしらえるように召使いにたのみました。
ところが、焼いていた召使いは、ニワトリのおいしそうなにおいにがまんができなくなって、足を1本食べてしまいました。そして、足が1本たりないのがわからないように、そっとお皿に乗せて、神父さんのところへ持ってきました。
でも、神父さんはすぐに気がついて、「おまえだね。このニワトリの足を食べたのは」
召使いはちょっとびっくりしました。でも、ちぢれっ毛の頭をふって答えました。
「いいえ、このニワトリは、生きているときから1本足でした」
「私がそんなことを信じるようなバカだと思っているのかね。ほら、おまえの顔に、私が食べましたと書いてあるじゃないか」
「いいえ、だんなさま。トリ小屋には、一本足のニワトリが他にもいます。うそではありません。こんど、そういうニワトリを見つけたら、すぐにお知らせします」
「よろしい、ではそうしておくれ」ということになりました。

しばらくして、昼寝をしていた神父さんのところへ、召使いが飛んできました。
「だんな様、1本足のニワトリが見つかりました。すぐに見に来てください」
神父さんは、ねむい目をこすりながら、トリ小屋へきました。召使いが指さしたほうを見ると、1本足のニワトリがいます。でもそれは、いっぽうの足を羽の下にひっこめているだけです。神父さんは、トリにえさをやるように、トッ、トッ、トッ、トッといいました。
すると、1本足のニワトリは、もう一方の足をおろして、かけてきたではありませんか。
「ほら、ごらん。そんなつくり話で、わしをだませると思っているのかね」
「だんなさま、私はうそつきではありません。だんなさまは、丸焼きのニワトリをお切りになるとき、トッ、トッ、トッ、トッとおっしゃらなかったでしょう。だから、あのとき見つからなかったのですよ」
これを聞いた神父さんは、黒人の召使いのお尻をピシャリとたたいて、神さまにお祈りをしました。
「神さま、このウソつきめを、どうぞお許しください」

投稿日:2007年06月20日(水) 08:58

 <  前の記事 「子どもワールド図書館」 オンラインブックに登場  |  トップページ  |  次の記事 すぐれた海防学者 「林 子平」  > 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://mt.izumishobo.co.jp/mt-tb.cgi/892

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

         

2014年08月

          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

月別アーカイブ

 

Mobile

児童英語・図書出版社 社長のこだわりプログmobile ver. http://mt.izumishobo.co.jp/plugins/Mobile/mtm.cgi?b=6

プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)