こうすれば子どもはしっかり育つ「良い子の育てかた」 34
小学校の体育館で、人形劇が行なわれたときのことです。幕間の10分の休けい時に、子どもたちが座席をはなれてさわぎはじめました。会場係の人がマイクで 「みなさん静かにしてくださいね。走りまわらないでくださいね」 と呼びかけてもなかなか静まりません。
そのうち、うしろの方で大きな音がしたと思うと、女の子が火がついたように泣きだしました。何人かの子どもがいたずらをしているうちに、バスケットボールなどのボールを入れる鉄の棚がたおれ、そばにいた女の子が、その下敷きになったのです。
やがて、先生や子どもや母親たちがかけつけました。そして棚を立てて下敷きの少女を抱きおこしながら、先生は 「だれだ、ここでいたずらをしたのは」 と子どもたちを叱り、何人かの母親は 「こんな危いものは、あらかじめしまっておかなくちゃ」 と暗に先生をなじりました。
すると、そのとき、下敷きになった女の子の母親が、わが子のひたいのかすり傷からにじみでている血をふいてやると、はっきり言いました。
「マイクでの注意をきかずに席を立ったこの子がいけないのです。それに、この子を席からはなれさせた私がいけないのです。おさわがせしてごめんなさい」
こんなとき、たいていの母親は、わが子かわいさに他を責めたくなるものです。しかし、この母親は 「責任は、あなたにあるのですよ」 ということを、わが子にしっかり言い聞かせました。
これは、たいへん、すばらしいしつけです。いまの子どもは、なにか事がおこると、すぐ、人や社会のせいにします。だから責任感がたいへん希薄です。自分に責任をもたせること、これは、子どもにとって、もっとも大切なことのひとつではないでしょうか。